アメリカのメリーランド州ボルチモアで毎年開催されているらしいジプシー・ジャズの祭典「Charm City Django Jazz Fest」の存在を知った。ボルチモア美術館にて2025年で10回目の開催となったこのフェスは、1930年代にジャンゴ・ラインハルトが創り上げた魅惑的なアコースティック音楽の世界を表現したものとのこと。EU圏内のフェスはよく見かけるが、アメリカでもジャンゴ・ラインハルトの音楽的遺産がこんなにも愛されているとは知らなかった。
フェスティバルのWebサイトには、Django Reinhardtの以下の言葉が紹介されている。
「ジャズに魅力を感じるのは、クラシック音楽で賞賛される形式的完璧さと楽器の精密さを見つけられるからです。これはポピュラー音楽にはないものです(Le jazz m'a attiré parce que j'y ai trouvé une perfection formelle et une précision instrumentale que j'admire dans la musique classique, mais que n'a pas la musique populaire.)」 世界には色々なジャンゴフェスがあるけれども、このフェスティバルのwebサイトには、特にジャンゴへの熱い思いを感じる。

マヌーシュ・ジャズとも言われるこのジャンルの範疇では、フランスやオランダ、ドイツあたりを拠点にしているミュージシャンしか知らない私だが、このフェスに集まるのは、アメリカで有名なジプシー・ジャズミュージシャンらしい。第9回の出演アーティストを見てみると、ニューオーリンズからChris ChristyとRussell Welch、ナッシュビルからバイオリニストのEli Bishop、キューバからピアニストのCésar Orozco、ロサンゼルスからクラリネット奏者でボーカリストのChloe Feoranzo...そして地元ボルチモアからも、若手ミュージシャンのSam Farthingや、Michael Joseph Harris、Will Ledbetterなどが参加したという。何よりも地元にHot Club of Baltimoreという、ジャンゴスタイルの音楽を追求するバンドがあるということだけで、ボルティモアが実はジプシー・ジャズがさかんな街だと言えるのではないかしら。今年4月に開催された同フェスでは、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリが1930年代に創設した伝説の「Quintette du Hot Club de France」への敬意を込めて、全米各地からホットクラブが集結したとか。私が唯一知るアメリカのHot Club、Hot Club of San Franciscoの初ボルチモア公演も今年行われたらしい。
ライブの様子は、ぜひこちらの映像をご確認いただきたい。同じジャンゴ・ラインハルトが作曲したレパートリーも、心なしかニューオリンズの味付けになっているように思うのは私だけだろうか。そして最後のMinor Swingの迫力ある大合奏で、アメリカのSwingを感じてほしい。
第9回
www.youtube.com
第10回
www.youtube.com