アンダルシアの虹

アンダルシアといえば…ルイス・ブニュエルの映画以外で思い浮かぶのは、私の場合、ソニーのハンディカムのCMだったりする。だれか覚えていないかなぁ。でもその時のモチーフはジプシー、あるいはロマの少女だったのだろうか。違う気がする。大きな青い空と民族衣装?を身に付けたのだろうか、カワイイ少女の笑顔だけが妙に印象に残っている。
さて、先日、musicircusの堀内さんから以下のご案内をいただいた。

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「アンダルシアの虹」 再放送

中尾幸世さんが主人公「A子」を演じた
30年前のテレビ作品がNHK総合テレビで再放送されます。
宜しければぜひご覧ください。

NHK総合「NHKアーカイブス」
2013年8月4日(日)ひる 13:05~14:40
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk-archives/next/index.html

「アンダルシアの虹」(川シリーズ・スペイン編)
作・演出:佐々木昭一郎
撮影:1982年夏、スペイン・アンダルシア地方、
初放送:1983年3月19日
受賞:文化庁芸術祭大賞、
プラハ国際テレビ祭最優秀演出賞

NHKでの再放送は、1983、86年(地上波放送)と、
1989年(NHK衛星放送)以来です。

(参考リンク)
「微音空間 中尾幸世」
http://www.utopiano.com/
ミュージサーカス内「彩耳記14」/堀内宏公
遍在する心、静かな宇宙の庭──佐々木昭一郎
http://homepage3.nifty.com/musicircus/saijiki/014.htm

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今日は国際アワードに出展したバージョン、かつ、デジタルリマスタしたものが放映された。
主人公の栄子は、ピアノの調律師。スペインのアンダルシア地方に暮らすジプシー(NHKでは、本作品の芸術性を考慮し、敢えてこの表現を変更することなく流した、と解説していた)と会いにいく。バックパッカーといえるのかな。
まず彼女が会いにいくのが、鍛冶屋のペペ。そして、ペペに紹介されて、洞穴作り職人のマヌエルに会いにいくのだ。7人家族のマヌエルに、下宿場所を乞う栄子。「1,000ペセタ」「いや10,000だ」と両者譲らず。交渉の結果住まいを得た栄子は、マヌエルの元で、洞穴作り(イメージ的には、トルコのカッパドキアみたいに、洞穴を住居・店舗化するような具合だ)職人として力仕事にいそしんだり、八百屋や魚屋の助手をしたり、ギター職人の元で原材料となる板を張り合わせてニスを塗るような行程に参加したり、はたまたパン屋で修業してみたり。その合間で、小鳥のさえずりを再現できる笛をつくる職人と出会い、市場で笛売りを手伝ったかと思えば、彼の紹介でピアノを調律する仕事を得てみたり。時間が許せば、RIO(川)と書かれたスケッチブックに、絵を描く。これまたとても繊細で、人の表情をとらえたいい絵だ。そして、赤ワインとパンを片手にスケッチをする栄子、暮らしへの馴染み方がすごい。
栄子の探し物は「音sonido」。音といっても、楽器や歌声の音だけではない。だから、冒頭部、お水がほしくて白い井戸を紹介され、手を叩いてそこの反響をみて喜んだり、Rio Guadalkivirの水音に耳を傾けたり、パンとパンを叩いてもらって、いい音がするパンを買ってみたりするのだ。
フラメンコもかなりの割合で登場する。「オレンジをとる手、ブドウをつまむ手、ブドウを踏む足、そして両手を虹でつくる」。正確ではないが、こんなニュアンスでフラメンコの踊り指導を受けていたなぁ栄子さん。私がみるフラメンコは高尚な芸術だが、実はこんな素朴な動きで説明できる踊りなのかもしれない。他にも印象に残ったことが多すぎて、書ききれない。
もちろん、これがすべて演出だということはわかっている。実際に女性一人で乗り込んでいって、まったく平和に過ごせるとは限らないだろう。でも、少なくとも出演者はみんな自然体で、風景も、そして音もみずみずしくて、ジプシーへのまなざしがやさしい、そんな作品だった。
ちなみに、調律師栄子のシリーズは、この「川シリーズ」としていくつかあるらしい。他のものも観たくなった。作品の雰囲気がわかるものを一応紹介するが、NHKアーカイブでぜひ観てほしい。

堀内さん、私がこの作品にこんなに感銘を受けるって、どうしてわかったんだろう。ご紹介、本当にありがとうございました!

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追記。言語フェチ目線で気になったこと。
アンダルシアの人と栄子の会話、すべて語尾の"s"が落ちているように聞こえた。
数だったら、Dos, Tres をド、トレと。挨拶であれば、例えばGraciasを「グラシア」という具合。やはりこちらの特殊な地方言葉があるのだろうか。今度調べてみよう。