370年以上続く小江戸の祭礼、「川越まつり」へ

10月18日(日)に、埼玉県川越市の「川越まつり」へ行ってきた。
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これは、小江戸と呼ばれる川越の街を、絢爛豪華な山車が練り歩くお祭りだ。正式には「川越氷川祭の山車行事」といい、370年以上の歴史を持つという。2005年には国の重要無形民俗文化財に指定され、2016年には全国33件の祭礼からなる「山・鉾・屋台行事」の一つとして、ユネスコ無形文化遺産に登録された。

パンフレットによると、川越まつりの起源は、江戸時代初期の1648年(慶安元年)にさかのぼる。当時の川越藩主、松平伊豆守信綱が、城下の総鎮守である川越氷川神社に神輿や獅子頭、太鼓などを寄進し、祭礼を奨励したのが始まりとされている。それから3年後の1651年には神輿が町を巡行する「神幸祭」が行われ、町人たちも行列に加わるようになった。やがて町ごとに趣向を凝らした出し物を披露するようになり、1698年には高沢町が初めて「踊り屋台」を出したという。

川越まつりが大きな影響を受けたのは、江戸の「天下祭」と言われる神田明神の神田祭と日枝神社の山王祭だという。今は江戸のお祭りはお神輿が中心だが、当時は山車だったということか。なぜなら、川越は新河岸川の舟運によって江戸と結ばれていたため、江戸の文化や流行が川越にも伝わり、祭礼も次第に豪華になっていったらしい。

現在の川越まつりは、一般に観光客でにぎわう山車行事は、毎年10月第3土曜日と日曜日に開催されているが、氷川神社の例大祭は10月14日に実施されている。

さて、川越まつりの主役は、各町内が所有する山車だ。豪華な彫刻、金箔、刺繍幕で飾られ、最上部には歴史上の人物や神話に登場する人物などの人形が据えられている。町内ごとに意匠が異なり、それぞれが独自の山車を誇る。











基本的に車輪は4つか3つ、台座の上に二重の鉾を組み、上層の鉾に人形を載せている。人形は、神話や英雄、能や雅楽を題材にしており、古いものはなんと江戸時代後期に制作しているものもあるらしい。上部の人形や鉾は上下に伸縮できる仕組みになっているとのことで、これはもともとは城門をくぐるための工夫だったという。








多くの山車には360度回転できる構造が備わっており、山車同士が出会った際には正面を向き合わせることができる。この仕組みが、川越まつり最大の見せ場「曳っかわせ(ひっかわせ)」を可能にしているとか。回る時、すっごい軋んだ音がしていた。

この曳っかわせは、山車同士がすれ違う際に、お互いの囃子台を向かい合わせ、お囃子を競演することを言う。笛や太鼓、鉦の音が響き合い、山車の上では舞が披露される。周囲では曳き手たちが提灯を掲げて声援を送る。特に夜の曳っかわせは、提灯の灯りに照らされた山車が向かい合い、華やかさを増す。

私が興味があるのはお囃子かな。

川越のお囃子は、江戸時代後期の文化・文政年間に江戸から伝えられたとされ、その源流は江戸の「葛西囃子」にある。もともと川越周辺にあった里神楽と結びつき、独自に発展していったという。

基本的な編成は、演奏者は笛1人、大太鼓1人、締太鼓2人、鉦(かね)1人。そこに、狐や獅子、オカメ、ヒョットコなどの面をつけた舞い手が加わる。演奏する曲には「屋台」「鎌倉」「四丁目」「仁羽(にんば)」などがあり、曲に合わせて舞も変わるらしい。この辺りは江戸囃子と一緒のタイトルのようだ。


川越のお囃子は、大きく次の三つの流派に分けられる。

王蔵流(おうぞうりゅう)
川越市南部の中台地区に伝わる流派。
江戸時代末期に高井戸の「笛角」という囃子の師匠から教えを受け、明治初期には王蔵金という囃子方の指導を受けて改良されたことから、王蔵流と呼ばれるようになったという。中台囃子連中は、川越まつりでは仲町の山車で演奏を担当している。

芝金杉流(しばかなすぎりゅう)
こちらは川越市今福地区を中心に伝承されている流派。
明治初期に、現在の調布市下布田にゆかりのある囃子の師匠、福岡仙松から指導を受けて成立した。
福岡仙松が東京・芝の金杉橋付近で下駄屋を営んでいたことから、「芝金杉流」の名前がついたとされる。今福囃子連中は、1888年に六軒町が山車を新造した際に囃子方として選ばれ、現在までその関係が続いている。

堤崎流(つつみさきりゅう)
埼玉県上尾市堤崎に由来する流派。
明治初期に吉澤菊次郎という人物が、隣村に伝わる木ノ下流のお囃子に改良を加えて成立させたといわれる。川越市内でも広く伝承されており、幸町囃子会や連雀町雀会など、多くの囃子連がこの系統に属している。

なお、川越にはこの三大流派以外にも、若狭流、木ノ下流など複数の系統が伝わっているらしい。

そこで思い出したのだが、2023年には、同じくユネスコ無形文化遺産に登録されている佐原の大祭を訪れているのだった。
佐原では何よりもお囃子に魅了された。50曲以上のレパートリーを持つ佐原囃子は旋律が豊かで、聴いているだけでも楽しい。下座連によって演奏に違いがあるのも面白かった。
asquita.hatenablog.jp

一方、川越のお囃子は、いかにも江戸囃子らしいと感じられる音色とリズム。ただ、私が知っている江戸囃子の手をキャッチすることはできず。残念ながら私にはその違いを聴き分けることができなかった。居囃子もいくつかみたのだが、なんというかキーフレーズがわからず、難しい。これがわかれば、単なるBGMとしてではなく、佐原のように、音楽そのものに夢中になれたのかもしれないけれど。

ただし、川越の山車は本当に素晴らしかった。山車を飾る精緻な彫刻や豪華な幕、最上部に掲げられた大きな人形。半数弱の山車が、県指定有形民俗文化財、市指定有形民俗文化財、川越市歴史文化伝承山車のどれかに指定されているらしいが、どれも本当によくできた山車ばかりだ。そして何よりも、蔵造りの建物が並ぶ歴史的な街並みと山車がよく似合う。

都内から1時間ちょっとの時間で行ける川越の町がこんなに巨大かつ魅力に満ちているとは知らなかった。今後、外国人に「おすすめの訪問先」を聞かれたら迷わず川越を進めると思うし、自分もまた一緒に行ってしまうと思う。その時にゆっくりまつり会館に入って山車のことも学びたいと思った。

令和8年 長崎くんちを見に。

長崎の諏訪神社で毎年10月7日から9日まで開催される秋季大祭「長崎くんち」。母が昔転勤で長崎に暮らしていた折「コッコデショ」に魅了されたとのこと。そこで、そのコッコデショが行われる今年に長崎くんち旅を企画したのだった。

ここでは、令和8年(2026年)のパンフレット「踊町紹介」をもとに、長崎くんちの歴史と、今年の踊町(おどりちょう)が奉納する演し物について記録しておく。

まずは長崎くんちの説明から。長崎の氏神「諏訪神社」の秋季大祭で、毎年10月7日から3日間、長崎の町を挙げて催されるお祭りだ。寛永11年(1634年)、当時の太夫町(後に丸山町と寄合町になる)の高尾と音羽の両人が、諏訪神社の神前に謡曲「小舞」を奉納したことが始まりといわれている。

では、踊町(おどりちょう)とは何かというと、奉納踊を出す町のこと。7年に一度、当番が回ってくるらしい。令和8年は、今籠町、油屋町、元船町、筑後町、鍛冶屋町、上町の6町が踊町だった。各町の説明についてパンフレットから引用する。

今籠町(いまかごまち)
演し物:本踊
平成21年(2009年)に57年ぶりとなる奉納を果たした今籠町。前回出演年の平成28年(2016年)は、籠職人の町であったことにちなみ、花籠を持った踊り子が華麗に舞い踊る演目で観衆を魅了した。今回は6人の踊り子たちが織りなす、美しく鮮やかな奉納踊りで長崎の町に華を添えた。

庭先まわりで長崎ぶらぶら節を踊る方々。

傘鉾(各町を象徴するプラカードのようなもの)の飾りは、白玉が飛散する巌上で荒鷲が翼を休める姿を表現している。
輪は蛇籠、垂れは塩瀬波模様で、100年以上の歴史を持つ。
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油屋町(あぶらやまち)
演し物:川船(かわふね)
根曳衆による勇壮な「根曳唄」とともに踊場へ入場する荘厳さ、豪華な長崎刺繍の船頭衣装を着けたかわいい船頭が見どころ。網打船頭による網打ちの後、軽快な囃子に合わせて、総檜造りの船体が踊場狭しと豪快に曳き回される。今年の船頭さん6歳、投網が上手だった。いつもこんなに上手くいくものなの?
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傘鉾はお茶の貿易で名高い大浦慶が寄贈したものと伝えられる。輪はしめ縄。飾りは畳の上に三方を置き、熨斗を献上する意匠となっており、その熨斗が落ちないように宝玉で押さえてある。

元船町(もとふなまち)
演し物:唐船祭(とうせんまつり)
鎖国時代の唐船貿易の様子を再現した「唐船祭」は、全演し物の中で唯一、神様である航海の守護神「媽祖(まそ)様」が祀られている。
江戸時代に中国から伝来した音楽「明清楽(みんしんがく)」の調べに合わせ、胡娘があでやかな舞いを披露する。その後、唐船の回転軸を移動させながら縦横無尽に曳き回す技「ドラゴン」が大きな見せ場となる。音は龍踊と一緒? なんか耳にのこるエキゾなリズムとサウンドだ。

傘鉾は、長崎名物の一つとして有名な大波止の「鉄砲ン玉」を中央に、鶴の港にちなんだ鶴二羽と老松樹を配している。
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筑後町(ちくごまち)
演し物:龍踊(じゃおどり)
1973年に初めて奉納して以来、8回目。青龍2体と白龍1体が、月に見立てた宝珠を目がけて天高く舞い踊る。中でも、3体の龍が一つの踊場へ集結し、ひしめき合いながら荒々しく乱舞する「巴踊り」は、筑後町独自の大技らしい。

傘鉾の輪は注連飾り。飾りは岩の上に金・銀・藍・白の玉を、八つ脚の上には鹿の角と草薙の剣を配し、榊とモロキ、八咫鏡(やたのかがみ)と曲玉をあしらっている。

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鍛冶屋町(かじやまち)
演し物:宝船・七福神(たからぶね・しちふくじん)
帆に「寶(たから)」の文字を掲げた豪華絢爛な「宝船」に乗って、七福神が登場する。七福神は、恵比須天、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋和尚の七柱。それぞれの性格を表現した踊りで観衆を楽しませる。その後、七福神に導かれた宝船が優雅に、そして力強く曳き回され、長崎の町へ福を運ぶ。




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傘鉾は、町名にちなんだ三条小鍛冶宗近と童子のからくり細工。宗近が槌を振ると、童子の顔が伏見稲荷の使いである狐に変わる仕掛けになっている。

上町(うわまち)
演し物:上町コッコデショ
平成21年(2009年)までは本踊を奉納していたが、町の活性化を目指し、前回出演年の平成28年(2016年)より「上町コッコデショ」を奉納している。対馬ひのきを使って新調した約1トンの山車を担ぎながら、踊場を勢いよく駆け回る。その後、「コッコデショ」の掛け声とともに山車を高々と投げ上げ、片手で受け止める離れ業が最大の見せ場となる。

傘鉾は、中央に御幣と榊を置き、諏訪社に神楽を奉納する意を表している。神楽鈴と烏帽子を八つ脚の上に載せている。
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街中で庭先まわりの中に見たのは、感動したなぁ。足が揃っているところと、少年少女か黄色い旗を持って腰をそらせるところが好き。

...ちょっと待て、うちの親がコッコデショに出会ったのは50年くらい前のことだが、上町が始まったのは2000年代...? ここで初めてわかったのだが、うちの親が見たコッコデショは椛島町のコッコデショか!

最後、浜町アーケードに行ったら、おのぼりという、神輿還御的なものにも立ち会えた。お賽銭箱も行列にいて、みんながバンバンお賽銭を投げ入れていた。すごいな、移動式。紋付き、袴的な唐人パッチと呼ばれるオシャレパンツに山高帽姿のおじさま、小紋のマダムと一張羅の子供たちもたくさんいた。

街中の、家紋まん幕の色味がかっこいい。




いつか、踊場で地元の人に混じって、モッテコイをやりたいなぁ。

錦秋十月大歌舞伎@歌舞伎座


今回の錦秋十月大歌舞伎第二部『近江源氏先陣館 盛綱陣屋』は片岡仁左衛門が主演するAプロを鑑賞した。
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まさかのイヤホンガイド無料DAYに当たりめっちゃラッキー。ま、いつもイヤホンガイドには本当にお世話になっているのだが、特に時代物の複雑な人間関係や物語の背景を理解するには、やはり解説付きがありがたいよなぁ。あと、今回のように三部制かつ出し物のうちの一つがお囃子や演舞中心だと、イヤホンガイドを借りずに乗り切ることもあるので、今回は本当にラッキーだった。





近江源氏先陣館 盛綱陣屋
佐々木盛綱:片岡仁左衛門
篝火:片岡孝太郎
和田兵衛秀盛:片岡愛之助
信楽太郎:坂東巳之助
伊吹藤太:中村種之助
高綱一子小四郎:中村梅枝
盛綱一子小三郎:中村秀乃介
微妙:中村萬壽
北條時政:中村歌六


『近江源氏先陣館』は1769年に大坂で初演された人形浄瑠璃を原作とする義太夫狂言で、「盛綱陣屋」はその八段目にあたる。
物語の舞台は鎌倉時代初期の琵琶湖の辺り。兄の佐々木盛綱は北条方、弟の高綱は源氏方と、兄弟が敵味方に分かれて戦っている。弟は子供を犠牲にして再起を図ろうとしている。盛綱の息子・小三郎が、敵方にいる高綱の息子・小四郎を生け捕りにしてくるところから、物語は展開する。

見どころは、弟・高綱とされる首を確認する「首実検」の場面だ。盛綱は武将としての責務を負いながら、家族への思いと、戦の裏に隠された事情に向き合うことになる。甥っ子がわざわざ首に向かって「父上」と呼びかけて腹を切ったことでピンと来て、甥っ子の死を無駄にしないために首実検の結果を偽り、自分が死のうとする。正直現代ではこんなことを策略する弟、高綱を賢い武将だとは全く思わないけれどもな...実はこの物語、鎌倉時代の佐々木兄弟に仮託しながら、大坂の陣で敵味方に分かれた真田信之と信繁(幸村)の兄弟をモデルにしているといわれる。実話が元になっているなら仕方がないな。

出演者では、仁左衛門以外では、中村種之助が演じる伊吹藤太が印象的だった。重厚で緊張感のある物語の中に登場する滑稽な人物で、種之助が今回もコミカルな芝居を見せてくれた。こんなシリアスな場面でふざけた役所を演じるのもなかなか勇気がいるなぁとも思うが、コミカルなんだけれども、踊りがやけにうまいから、嫌な感じもない。

そして今回、特に感心したのが、高綱の息子・小四郎を演じた五代目中村梅枝だ。中村萬壽が実の祖父と言うことなので、おじいさんは気が気じゃなかっただろうな。梅枝はまだ10歳とのことだが、大人の役者たちとの掛け合いがしっかり成立していて感心した。一人や二人で踊ったり演じたりするよりも、掛け合いの方が難しいと思うんだよな。この舞台での小四郎は、敵に捕らえられ、命を脅かされる少年でありながら、実は父・高綱の策略を理解し、覚悟を決めた武士の子でもある。セリフも結構長めだ。これから期待されていくんだろうな。

ま、それでもやはり首実検は気持ちのいい内容ではないなぁ。

山帰強桔梗
こちらは、坂東巳之助による清元舞踊。

大山詣りから江戸へ戻る鳶の大吉が、旅の思い出や遊興の様子を軽妙に踊る作品である。
ちなみに大山詣りは、江戸時代に盛んだった庶民の参詣旅行のことらしい。神奈川県伊勢原市の大山阿夫利神社を目指す旅で、信仰と観光、娯楽が一体になっていた。

『山帰強桔梗』は1823年に三世坂東三津五郎が初演した作品。今回、23年ぶりに、三津五郎の子孫?が復活させた、ということになる。10代目三津五郎って私でもわかるくらい踊りが上手だったから、この家を継ぐのは計り知れないプレッシャーがあると思うが、頑張って欲しいなぁ。




東京フィル 午後のコンサート「絢爛たる一族」@東京オペラシティ コンサートホール

東京フィルハーモニー交響楽団の「午後のコンサート」に行ってきた。

今回のテーマは「絢爛たる一族」ということで、シュトラウス家、服部家など、世代を超えて音楽を受け継いできた「音楽家一族」に焦点を当てたプログラムだった。四代続けて著名な音楽家を出した一家というのはそんなにたくさんいないそうだが、そんなかでフィーチャーされていたのが、ウィーンのシュトラウス一家。
父:ヨハン・シュトラウス1世
長男:ヨハン・シュトラウス2世
次男:ヨーゼフ・シュトラウス
ということなのだが、うん、シュトラウス一族は確かに才能が集まりすぎて、誰が何を作ったのがごっちゃになるな。ちなみに一番有名なのは、2世らしい。
一方、日本サイドの音楽一家ということで特集された家族が、服部一族。バイオリニストの服部百音がソリストだったので、彼女の奏でるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を聞いてから、百音の曽祖父、服部良一や祖父の服部克久、そして父の服部隆之の曲を楽しむというプログラムだった。

プログラム
2026年10月4日(日)14:00
指揮とお話:角田鋼亮
ヴァイオリン:服部百音
コンサートマスター:岡本誠司
〈絢爛たる一族〉

  • J.シュトラウス2世:喜歌劇《くるまば草》序曲
  • パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番

――休憩――

  • 服部良一:《蘇州夜曲》
  • 服部克久:《晩秋のアダージョ》
  • 服部隆之:NHK大河ドラマ『真田丸』メインテーマ
  • 服部隆之:《Les enfants de la Terre ~地球のこどもたち~》
  • ワーグナー:歌劇《タンホイザー》序曲

「蘇州夜曲」はとてもいい曲だが、ヴァイオリンで聴くのはまた乙なものでとても良かった。服部克久は、一族のなかで一番私が認識ある作曲家だったのだが、それは、Le Rhôneという曲のおかげ。他の曲はあまり知らなかったのだが、この日初めて聴いた「晩秋のアダージョ」も素晴らしい曲だった。
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服部隆之氏のことはほぼ認識していなかったのだが、「真田丸」のメインテーマを聴いたらすぐにピンときた。ええ、これを作った人なのか! 有名なドラマやアニメなどのテーマから挿入歌までものすごい数の楽曲を作曲していることがわかった。お嬢様がヴァイオリニストだから、隆之氏の楽曲のうちヴァイオリンの独奏部分がフレキシブルに長くなったり短くなったりしたそう。また、作曲の過程でも家族間で協力などしたとか。百音氏と隆之氏のファミリートークが暖かくて、楽しいコンサートだった。
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タンホイザー序曲も、服部家のコーナーが楽しすぎて、印象に残らなかったくらい(笑)。あ、アンコールがシュトラウス2世のThunder and Lightning(雷鳴と電光)となり、うまく「絢爛たる一族」というテーマに結びついた。
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指揮の角田鋼亮氏、スタイルがシュッとしているだけでなく、話も楽しかったです。MC上手!

第23回 地域伝統芸能まつり@NHKホール

2023年2月19日、NHKホールで開催された「第23回 地域伝統芸能まつり」を見に行ったのだが、このプログラムを眺めながら当日記録をしておきたい。これは、全国各地に伝わる祭りや神楽、太鼓、芸能などを一度に見ることのできる催しで、この年は愛媛、青森、長野、岡山、沖縄、佐賀、広島、秋田などから10演目が集まった。


この日の演目は以下のとおり。
1. 一人角力(愛媛県今治市)
2. 田子神楽(青森県田子町)
3. 御諏訪太鼓(長野県岡谷市)
4. 高田神社横野獅子舞(岡山県津山市)
5. 座喜味棒術(沖縄県読谷村)
6. 復曲能「名取ノ老女」(短縮版)
7. 今寺面浮立(佐賀県嬉野市)
8. 伊賀和志神楽(広島県三次市)
9. エイサー(沖縄県沖縄市)
10. 秋田竿燈まつり(秋田県秋田市)

一人角力
愛媛県今治市、大山祇神社に伝わる神事。
名前だけ見ると一人で相撲を取るのかと思うが、実際には人間の力士が「稲の精霊」を相手に相撲を取る。もちろん精霊は目には見えない。
三本勝負で、1番勝負は力士、2番勝負は稲の精霊、3番勝負は稲の精霊が勝つ。稲の精霊が2勝1敗で勝つことで、豊作が約束されるという意味があるそうだ。記録には1364年の文書にも一人角力の記述があり、その後途絶えた時期を経て1959年に復活したという。
コロナでまた途絶えていたところが、2023年に4年ぶりに復活したらしい。精霊に勝っていただいて豊作を約束してもらう、ってなんか人間っぽい発想でいいなぁ。人間も1回は勝つというところも。
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田子神楽
青森県田子(たっこ)町に400年以上前から伝わる山伏神楽。
江戸時代初期から南部藩の御用神楽を務め、明治時代には正月16日に盛岡城へ登城して神楽を披露していたともいう。
曲目は合計16番が伝承されていて、獅子頭を奉ずる権現舞を基本に、番楽、鶏舞、翁舞、天形、信夫太郎などの曲目が伝えられている。お囃子は、笛、太鼓、手平鉦の3種類で五拍子。昭和60年代に存続の危機を迎えた際、女性も参加するようになったとか。今では学校の部活もなくなってしまい、田子神楽保存会が後継者の育成に務めている。
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御諏訪太鼓
長野県岡谷市の御諏訪太鼓。
諏訪大社に伝承されてきた太鼓を、戦国時代には武田信玄が軍楽として用いたとされる。明治以降一度途絶えたものの、戦後、宗家・小口大八によって復元された。大太鼓と中太鼓を組み合わせ、複数の太鼓によるオーケストラのような構成にした演奏が特徴。
こちらも明治以降一度途絶えてしまったが、諏訪太鼓流家元七代目宗家である小口大八氏が復元し、昭和26年に創案が完成したそう。その特徴は、複式複打法ということで18種の太鼓でオーケストラ仕立てになっていること。
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高田神社横野獅子舞
岡山県津山市横野地区の獅子舞。
713年、美作国が設置されたころから高田神社の獅子舞が神事に加わっていたと伝えられているという。
雄獅子と雌獅子の二頭で舞い、「地練り」「継ぎ獅子」「練り込み」と展開する。最後は二頭が相離れて荒々しく悪魔不浄を払い、神前で神事を終える。
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座喜味棒術
沖縄県読谷村に伝わる棒術。
歴史は約500年とされ、座喜味城を築城した護佐丸の時代から普及したともいわれる。
沖縄の棒術には、集団で村を防衛する役割もあった。座喜味棒術には心・技・体を基本とした11種類の型があり、六尺棒や三尺棒を使うほか、ほら貝や指笛、太鼓、銅鑼などに合わせて演じられる。特徴は実戦型だということ。ただ魅せるだけでなく急所攻めたりするらしい。
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復曲能「名取ノ老女」
現在の宮城県名取市を舞台とする能。
長く上演が途絶えていた作品を国立能楽堂が復曲し、2016年に約130年ぶりに復活上演したものだという。
熊野権現を信仰する名取の老女が、年老いて参詣できなくなったため名取に社を勧請して祈りを捧げ、その信仰に神が応える、という物語。
この日は短縮版が上演された。

今寺面浮立(めんぶりゅう)
佐賀県嬉野市に伝わる「面浮立」。
戦国時代、大内軍との戦いで、龍造寺方の鍋島直茂が兵にシャグマと鬼面をつけさせて奇襲し、勝利したことに由来すると伝えられている。
鬼面を着けた演者が舞う姿が特徴で、現在では五穀豊穣への感謝や天下泰平を祈る神事芸能として伝承されている。
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伊賀和志神楽
広島県三次市の神楽で、石見神楽のうち邑智33神楽の阿須那派に属するというから要は石見神楽を演じる集団の一つということか。
演目には比較的穏やかかつ石見神楽の原型と言える「六調子」と、テンポの速い「八調子」があり、華やかな衣装と舞も特徴。

エイサー
沖縄県沖縄市からは、中の町青年会によるエイサーが来場していた。新宿で毎年やっているから東京でもだいぶ馴染み深い演芸だと思うエイサーは沖縄の盆踊りの一つで、旧暦7月13日から15日に地域を踊りながら練り歩く。
起源には諸説あるが、1603~1606年ごろ、浄土宗の袋中上人(たいちゅうしょうにん)が念仏踊りを伝え、それが沖縄独自の形へ発展したという説もある。中の町青年会のエイサーは、大太鼓と締太鼓によるダイナミックな踊り、男性の力強い手踊り、女性のしなやかな踊りが特徴。
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多分この構成をやったんだな。女性だけで赤田首里殿内を囃子してから、「あやぐ」へ移行。
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秋田竿燈まつり
最後は8月3-6日に行われる秋田市の秋田竿燈まつり。これも全国的に有名だと思う。
竿燈は、真夏の病魔や邪気を払う「ねぶり流し」が起源とされ、江戸時代の宝暦年間には原型となる行事ができていたという。
現在最大の「大若」は長さ約12メートル、重さ約50キロ。46個の提灯をつけた竿燈を、手のひら、額、肩、腰などに載せて操る、そのスリリングな曲芸感が魅力なんだと思う。

1日で色々な伝統を楽しむことができたいいイベントだった。正しいイベントレポートは主催者のブログからどうぞ。
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米ノースカロライナ州のジャンゴフェス「Carrboro Django Reinhardt Festival」、ライブ動画を公開

いつもの通りYouTubeをパトロールしていたところ、一つの音楽フェスティバルを知った。アメリカ・ノースカロライナ州のカーボロで開かれる「Carrboro Django Reinhardt Festival」だ。ポスターもセンスが良い!

今回見つけたのは、Voyage Hot Clubというグループに、あのオランダのギタリストのPaulus Schäfer(パウルス・シェーフェル)が加わった公演の映像。フェスの公式ページによると、2026年3月20日、ライブハウス「Cat’s Cradle Back Room」で収録されたものだった。

ジャンゴの名前を冠したフェスが世界各地で開催されているのは、ご存知の通りだが、このカーボロのフェスを立ち上げたのは、地元の音楽家・音楽教師で、Onyx Club Boysでも活動するGabriel Pelli(ガブリエル・ペリ)。きっかけは、フランス出身のギタリスト、Stephane Wrembel(ステファン・レンベル)を地元の公演に招こうとしたことだった、という。映画『ミッドナイト・イン・パリ』で使われている「Bistro Fada」の作曲者、といえば思い当たる人もいるかもしれない。ジャンゴの音楽を追い求めるだけでなく、自らも音楽祭とギターキャンプ「Django à Gogo」を主宰する音楽家だ。この彼から、コンサートにワークショップやギターのレッスンも組み合わせてはどうか、という提案があり、2018年のカーボロ・ジャンゴ・ラインハルト・フェスティバル初開催につながったそう。

2026年は3月20〜22日に開催された第5回でも、コンサートのほかにミュージシャンによるワークショップや、最終日のジャムセッションも設けられたという。

動画に出てくるVoyage Hot Club(ヴォヤージュ・ホット・クラブ)は、ヴァイオリニストのEva Slongo(エヴァ・スロンゴ)と、アメリカ人ギタリストのJimmy Grant(ジミー・グラント)によるデュオを軸にしたグループだ。訪れる国に応じて現地の奏者を迎え、トリオ、カルテット、クインテットと編成を変える。レパートリーも、ジプシー・ジャズにクラシック音楽やオリジナル曲を組み合わせているとか。

カーボロのライブでは、アメリカでジプシージャズに傾倒しているギタリスト、Jimmy GrantとSam Farthingとともに、スイス出身のバイオリニストで、あのDidier LockwoodやPierre Blanchardにも師事していたEva Slongo、Dylan Perilloがベース、そしてゲストのPaulus Schäferがギターとして記載されている。

Paulus Schäferは、マヌーシュ・ジャズ界隈では有名な、1978年生まれのオランダのギタリストだ。作曲家、音楽教師。シンティのコミュニティに生まれており、やはりオランダで活躍するStochelo Rosenberg(ストケロ・ローゼンバーグ)やBiréli Lagrèneらとの共演を重ねている。こんな贅沢なライブがフルで楽しめるので、ぜひご覧いただきたい。

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トニーニョ・オルタを北とぴあで聴く――Jazz in Hokutopia Vol.4

2026年9月26日、北とぴあ さくらホールで「Jazz in Hokutopia Vol.4」を観た。お目当てはトニーニョ・オルタToninho Horta。ソロライブ、ジャパン・ジャズ・コレクティブ(with 馬場智章sax アキラ・イシグロgt、小川晋平bs、小田切和寛ds)、ジャパン・ブラジル・コレクティブ(with Nobie vo、太田朱美fl, 小畑和彦gt、織原良次bs, 斉藤良ds)という三つの編成で、休憩を挟んでたっぷり約3時間。こんなに長く、生のトニーニョを聴けるとは思っていなかった。

私が前に観たのは、韓国のギタリスト、ジャック・リーとのデュオ「From Belo to Seoul」@コットンクラブ以来だったかな、と思ったのだが、2018年のツアーにも観に行っていた...ということは、どうやら今回で3回目のトニーニョらしい。

今回の新作『Standards & Stories』は、少年時代に親しんだアメリカ音楽への敬意と、音楽の手ほどきをしてくれた亡き兄パウロ・オルタへの思いが込められたアルバムだという。ステージでもお兄さんの話を何度かしていた。それこそ、パウロがトニーニョにジャズのレコードを聴かせたり、『Clube da Esquina』に代表されるようなミナスの音楽仲間とのつながりにも関わっていたとか。そういえば、私は今回までトニーニョが『Clube da Esquina』に参加していたことを初めて認識した(ファンの割に遅い?)。私の中では、あのアルバムはミルトン・ナシメントMilton Nacimentoとロー・ボルジェスLo Borgesのもの、という印象が強かったのだ。今回演奏されたClub Da Esquinaに収録されていた「O Trem Azul(Toninho はBlue Train!と英語で言っていたね)」をあとから調べてみると、オリジナル録音ではトニーニョがギターとバック・コーラスを担当しているらしいのだ。そして、アルバムのほかの曲ではベースやパーカッションまで演奏していた。これも知らなかった事実であり、今回、ステージでドラマーに細かく合図を送る姿を見ながら、「リズムにもずいぶん耳を向けているんだな」と思っていたのだが、それはパーカッション担当としての血が騒いだのかもしれないなと思った。

セットリストは公式で出していただくことを期待しつつ...
「Moon River」のようなスタンダード、ジョビンへの敬意が伝わる「From Ton to Tom」。そして何より聴きたかったトニーニョ自身の曲――「Durango Kid」「Manuel, o Audaz」「Beijo Partido」「Francisca」「Shinkan Sem」「Aqui, Ó」「Aquelas Coisas Todas」などを聴けて、もう満足としか言いようがない。個人的には、かつて聴いていたBophanaのメンバー、織原良次さんをステージで見られたのもうれしかった。

トニーニョをこれほど大きな編成で生で聴くのは初めて。今回はこの来日のために組まれた二つのバンドで、共演者には相当な集中力が要ったのではないだろうか。複雑な曲の中で、ソロを渡すタイミングも、その場のトニーニョの合図で変わっていくように見えた。演奏しながら全体をよく見て、細かな指示を出す。さすが神様。共演者のみなさんも、その動きに応えながら音楽を作っていたが、いやぁ特にメロディ系の楽器は辛いだろうなと思ってみていた。

トニーニョは今回特にステージ上では饒舌だったように感じたが、ギターの話も面白かった。海外ツアーに何本も持ち歩くのは大変なので、日本のすばらしい職人からギターを借りている、と。あとで調べると、ナイロン弦ギターは越前良平さん製作のEchizen Guitars、エレクトリックは西村真樹さんが立ち上げたWestvilleのArubaだそうだ。西村さんの名前は何となく覚えていたのに「越前」が出てこず、写真をChatGPTに見せて何度かやり取りしたら、ちゃんと知りたかった楽器名にたどり着いた。詳細の記事はこちらからどうぞ。
acousticguitarmagazine.jp

お寿司はあまり得意ではなさそうだけれど、うどんや焼きそばは好きらしい、という小さな日本滞在情報も披露してくれた。年齢を感じさせない演奏と声、ここ数年は色々な悲しいニュースもあったようだが、そこと音楽を結びつけずに楽しむ様子、やっぱりトニーニョはそうであったほしいな。これからも無邪気に貪欲に音楽を紡いでいって、また来日してほしいなぁ。

最新アルバム等の情報はTower Recordsの媒体からどうぞ。
mikiki.tokyo.jp