ケシ畑の小さな秘密

フアン・カルロス・メロ・ゲバラ監督、2012年、コロンビア、Jardin de Amapolas

舞台は内戦が続くコロンビア。少年シモンは父親エミリオと革命軍の襲撃を逃れ、父の従兄弟、ウィルソンを頼りに行く。その親戚の家もゲリラに襲撃されてもぬけのからだったが、無事に会うことができた。すでに働き口もないその村での働き口は、麻薬の原料となるケシの栽培だった。違法だが他の選択肢もない。エミリオは息子に詳しい仕事先の話はしなかったが、ひょんなことから職場がシモンにバレてしまう。しかし、シモンはそのケシ畑のボスに気に入られ、かわいがられるようになった。そのことに目をつけたウィルソンに、シモンはある話を持ちかけられるのであった…。
エミリオはまさに善良なる市民であり、どんなに暮らしが苦しくても、息子が悪い道に行きそうになるのをとめようとする。でも、シモンはすでに母親、兄、弟をゲリラに殺されており、略奪にもあっているので、きっとそんな父親の善良さをもどかしく思っていることだろう。隣の家の少女ルイサと遊びながらも、彼らの"秘密の場所"に行くまでの道にだって地雷原があり、ただ歩くだけでも安心はできない。犬を飼いたいルイサとシモンの「考え付いたこと」にもずいぶんハラハラさせられるが、そんなことからは想像もつかないことが起こって、二人は二度と会えなくなるのだった。死は哀しいことだが、ここで生き残るのが果たして幸せなのか。シンプルな短い映画だが、色々なことを考えさせられた。
シモンとルイサの会話。
「特別な腕輪よ。大切にして。」
「くれるの?」
「あげないわ。貸すだけ。」
「貸す?」
「そうよ。一生貸すだけ。」か。少年少女の会話として、あまりにも色っぽいではないか。

そしてその腕輪には、美しい湖の色をした石がついている。結局この二人は無事湖に着けたことがこの映画の唯一の救いなのかもしれない。