スペイン、2009年、 Los abrazos rotos、ペドロ・アルモドバル監督
ハリー・ケインは、盲目の脚本家。またの名をマテオ・ブランコという。過去に関係があった実業家、エルネスト・マルテルの死を知ったことをきっかけに、過去の思い出、とくに、レナのことを思い出すのだった。レナは、かつてのエルネスト・マルテルの秘書であり、愛人であった。俳優を志願していたレナを主役に映画を撮影するマテオは、レナを愛することになる。ただし、エルネストのレナに対する思いも、マテオに負けじと深かった…。
ペネロペ・クルスがとくかく美しい。秘書、かつ死期を迎えた父親を思うちょっと愁いを帯びた時から、俳優となって魅力を全開にし、そしてマテオと愛し合う。灯がともったり消えたりするギャップが素晴らしいのだ。そして、エルネストの執拗さ、嫉妬の深さ、そして愛の強さ…（息子を使ってまでそんなことする？）というのがよくわかった。世の中、とくに人の心はなかなかうまく操れないものだよなぁ。エルネストの復讐は「おお、そんなやり方もあったんだ」と思わず感心する陰湿さ。アーティストだったら許せないような、ある意味スケールの大きい復讐方法だと思った。でも、10年以上経過し、レナ以外にも自分を愛してくれる人々を感じるうちに、マテオの気持ちが変化する片鱗が見えたのが救いかもしれない。
