442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍


"442-Live with Honor, Die with Dignity"、すずきじゅんいち監督、2008年、日・米合作
http://www.442f­ilm.com/

西海岸のオークランド界隈に暮らす日系2世のおじ・おば夫妻には、中学3年以来、ほぼ毎年お世話になっており、かわいがってもらっていた。行くたびに日系人コミュニティのイベントやら盆踊りやら、連れていかれたものだ。

時に、うっすらかつての苦労の匂いを感じたこともある。でも、不思議なことに、日系人のいろんな人と話をしていてかつての日本を懐かしむような話はきいたが、戦時中の苦労話や収容所の話は一度も出たことはなかった。ましてや3世ともなれば、もはや日本をみじんも感じさせない。2世の親から戦時中の話もきいていないだろう。

ところが5年前、おじが亡くなった年に久々に親戚の家を訪問した時のこと。夜、二人でお茶を飲んでいたときに、おばがはじめて、収容所の話をしてきた。「私は収容所でも優しいユダヤ人夫妻にお世話になって、収容所外の大学に行くことができた。本当によい出会いがあって幸せな人生だった」と。それは私にとっちゃ本当に衝撃的な発言で、以来ずっとそのことを考えていたのだった。

この映画は、第二次世界大戦中、日系人だけで組織された「アメリカ陸軍442連隊」の一員として戦い、生き残った日系人たちへのインタビューを軸に、当時の模様を描いた映画だ。米国人アイデンティティを持っているにもかかわらず、米国内で人種差別に逢い、収容所で銃口を向けられていた日系人が、「ピンチはチャンス」とばかりに米国兵として国に忠誠を示すべく戦った結果、米軍史上最も多くの勲章を受けた舞台として歴史に名を残した。フランスのBruyeres(ブリュイエール)には、442連隊通り(Rue de 442nd Regimental Combat Team)もあるくらいだ。

でも、この映画は、そんな栄光を後世に残さんとする物語というだけではない。むしろ当時の日系人の立ち位置、葛藤や苦悩、そしてどんな苦難があったも「家に恥をかかすまい」ともがき、どんなにひどい扱いを受けても、真面目に向き合えばいつか認められると信じて、ひたすら努力する姿勢がみえた。彼らの成果を国としてきちんと認めた米国の懐の深さも、また素晴らしいと思った。だから、2世はあのような目に遭ってもなお、米国に忠誠を誓うのだ。

1世が2世に伝えたことは、素晴らしい日本人としての精神だったのだな。この映画でみえる彼らの心の根っこの部分は、私にはまねできないものばかりだ。

すずきじゅんいちさんといえば、マンサナ収容所の暮らしを写真に収めたカメラマンの話を題材にした映画「東洋宮武が覗いた時代」があるが、私はこちらの映画のほうが、より心に残った。
彼らが1世から教えられた、印象的な日本語の数々、そして、442連隊のモットー"Go for broke!(あたって砕けろ)"という言葉がものすごく重たい言葉となって響く。これはぜひ、観るべき映画でしょう。

長い、長い、トレイラー。