フェノロサやら岡倉天心が収集した美術品をはじめ、さまざまな日本美術を収集しているボストン美術館。「海の向こうの正倉院」なんてうまいこと表現したものだと思う。曽我蕭白の作品を目当てに出かけていったら、仏像や絵巻に刀に着物と、豪華な日本美術品が勢ぞろいだったため、圧倒された。
しょっぱな、岡倉天心の像があると説明されていたのだが、私はボストン美術館前に置かれている、両手を上にあげて空を仰ぐ人の像の写真を天心像と勘違いし「へえ、ボストン美術館の前に天心が飾られているんだ」と勘違いしてしまったりもしたが、(もちろんすぐにそのミスに気が付いた)展示物はどれも見ごたえがあった。意外に面白かったのが、遣唐使の吉備真備を題材にした絵巻「吉備大臣入唐絵巻」だ。絵巻の場面場面に、唐に歓迎されるかと思いきやいろいろな能力をテストされるも、いろいろな超自然現象に助けられながらその試験を淡々とこなし、唐の役人たち(?)に驚かれる吉備真備the super starの様子が描かれている。そのユーモアはとてもわかりやすいので、これぞ日本が誇る漫画文化の原点なんじゃないの?といいたくなる。
仏画はいくつか美しい色合いや構図のものがあったが、たくさんありすぎてどれがそのお目当てのものだったか、わからなくなってしまった。能装束は美しさにただただ圧倒され、刀はイマイチ観賞方法を把握していないままひたすらその鈍い光に注目した。これだけの規模だと、あの伊藤若冲もかすむというものだ。等伯の「龍虎図屏風」も、後にくる曽我蕭白の雲龍図をみてしまったら、いまいち感動がなくなってしまった。曽我蕭白は本当に魅力的だった。風景画も、ドットをつないでみせるようなものもあり、印象派のような不思議な感じ。おおむね大胆な構図と自由な筆致が魅力なんだろうが、「虎渓三笑図屏風」の、三人のいかにも楽しそうな爺さんの絵が妙に印象に残った。