名人は危うきに遊ぶ

 

名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫)

名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫)

 

 

 

白洲正子さんによる数々の随筆のまとめ。梅若宗家でお能を習ったという特殊な育ちが日本文化への造詣を深めたのだろうな。好き嫌いや美醜の判断も明確でキレの良い文章が続く。そのくせ、有名人の名言などはうろ覚えでもそのまま書いてしまうところから、なんだかさばけて勢いのあるお人柄を想像した。
とくに印象に残ったのは、こんな話かな。
  • 伝統芸能は、型によってみな同じことをするからこそ、個性の相違が現れる
  • 古式の伝統芸能は必ずしも復元して良いものではない。古い型はつまらないから捨てられたものが多く、残っているのは洗練を重ねたものだから
  • かつて薪能興福寺で行われるものだけを指したことを知るべき
その他にも桜や陶芸、草木などに関する随筆に含まれたスパイスにしびれた。私の行った東大寺二月堂の修二会の話や高千穂夜神楽の話が収録されているのも嬉しい。高千穂については、これを読んで、国見ヶ丘と二上山に行くべきだった…と少し惜しい気持ちを持った一方、くしふる神社や天真名井や高千穂峡、天安河原や天岩戸神社は、これが書かれた1982年頃も今も変わりがないことに感激した。