アイヌモシㇼ@ユーロスペース渋谷


2020 年、日本、福永壮志監督、Ainu Mosir

最近、観た映画はすべてFilmarks(フィルマークス)というアプリに入れているのでブログには書かなくなったが、これはすごく良すぎたのでメモしておこう。

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舞台は北海道の阿寒湖畔にあるアイヌの集落(アイヌコタン)だ。ちょっとデビュー時の柳楽優弥を彷彿とさせる主人公の少年、カントは、アイヌ文化を積極的に推進してきた父をなくし、アイヌの土産物屋を切り盛りし、アイヌ芸能を披露する母親と二人くらい。たぶんアイヌの文化が身近すぎるからこそちょっと疎ましく思っている感じだ。が、父親と親友だったデボに刺激を受けたりして、徐々に自分のアイデンティティに対峙していく。
ある日、小熊の飼育を通じて、カントの心を揺るがす出来事が起こるのだった。

カントと母親役のエミが本当の親子だと知って、納得。イオマンテを実施するかどうかをコタンの住民たちが真剣に議論するシーンは、もはや本物の議論だときいた。この映画の素晴らしさの鍵は、出演者の大部分が阿寒アイヌである、というところなのだろう。また、今や世の中の事情で実現が難しそうな実際の伝統行事を、過去のVHS記録映像と重ね合わせてみせるあたり、さすがだと思った。カントたちがやっている伝統とは切り離してやっているバンドの方向性についての議論はとってもリアルだし、また、(こう言っては申し訳ないが)観光でみせるアイヌの安っぽさや、観光客の理解のなさ(店番をするエミに大して「日本語上手ですね」と問いかける無知さなど。実際あるんだろうな)があるからこそ、ますます真剣にアイヌの本当の文化を継承するにはどうすればいいのか、考えてしまうんだろうな。彼らは白老の「ウポポイ」をどう感じているのだろうか。

思春期らしくクールに振舞うカントが、ある神秘に触れた時に、なんだか涙が出てきてしまった。
cinemagical.themedia.jp

デボ(秋辺デボ)とエミ(下倉絵美/床絵美)は、「kapiwとapappo〜アイヌの姉妹の物語〜」というドキュメンタリーにも出演している。こちらも観てみたい。