トニーニョ・オルタを北とぴあで聴く――Jazz in Hokutopia Vol.4

2026年9月26日、北とぴあ さくらホールで「Jazz in Hokutopia Vol.4」を観た。お目当てはトニーニョ・オルタToninho Horta。ソロライブ、ジャパン・ジャズ・コレクティブ(with 馬場智章sax アキラ・イシグロgt、小川晋平bs、小田切和寛ds)、ジャパン・ブラジル・コレクティブ(with Nobie vo、太田朱美fl, 小畑和彦gt、織原良次bs, 斉藤良ds)という三つの編成で、休憩を挟んでたっぷり約3時間。こんなに長く、生のトニーニョを聴けるとは思っていなかった。

私が前に観たのは、韓国のギタリスト、ジャック・リーとのデュオ「From Belo to Seoul」@コットンクラブ以来だったかな、と思ったのだが、2018年のツアーにも観に行っていた...ということは、どうやら今回で3回目のトニーニョらしい。

今回の新作『Standards & Stories』は、少年時代に親しんだアメリカ音楽への敬意と、音楽の手ほどきをしてくれた亡き兄パウロ・オルタへの思いが込められたアルバムだという。ステージでもお兄さんの話を何度かしていた。それこそ、パウロがトニーニョにジャズのレコードを聴かせたり、『Clube da Esquina』に代表されるようなミナスの音楽仲間とのつながりにも関わっていたとか。そういえば、私は今回までトニーニョが『Clube da Esquina』に参加していたことを初めて認識した(ファンの割に遅い?)。私の中では、あのアルバムはミルトン・ナシメントMilton Nacimentoとロー・ボルジェスLo Borgesのもの、という印象が強かったのだ。今回演奏されたClub Da Esquinaに収録されていた「O Trem Azul(Toninho はBlue Train!と英語で言っていたね)」をあとから調べてみると、オリジナル録音ではトニーニョがギターとバック・コーラスを担当しているらしいのだ。そして、アルバムのほかの曲ではベースやパーカッションまで演奏していた。これも知らなかった事実であり、今回、ステージでドラマーに細かく合図を送る姿を見ながら、「リズムにもずいぶん耳を向けているんだな」と思っていたのだが、それはパーカッション担当としての血が騒いだのかもしれないなと思った。

セットリストは公式で出していただくことを期待しつつ...
「Moon River」のようなスタンダード、ジョビンへの敬意が伝わる「From Ton to Tom」。そして何より聴きたかったトニーニョ自身の曲――「Durango Kid」「Manuel, o Audaz」「Beijo Partido」「Francisca」「Shinkan Sem」「Aqui, Ó」「Aquelas Coisas Todas」などを聴けて、もう満足としか言いようがない。個人的には、かつて聴いていたBophanaのメンバー、織原良次さんをステージで見られたのもうれしかった。

トニーニョをこれほど大きな編成で生で聴くのは初めて。今回はこの来日のために組まれた二つのバンドで、共演者には相当な集中力が要ったのではないだろうか。複雑な曲の中で、ソロを渡すタイミングも、その場のトニーニョの合図で変わっていくように見えた。演奏しながら全体をよく見て、細かな指示を出す。さすが神様。共演者のみなさんも、その動きに応えながら音楽を作っていたが、いやぁ特にメロディ系の楽器は辛いだろうなと思ってみていた。

トニーニョは今回特にステージ上では饒舌だったように感じたが、ギターの話も面白かった。海外ツアーに何本も持ち歩くのは大変なので、日本のすばらしい職人からギターを借りている、と。あとで調べると、ナイロン弦ギターは越前良平さん製作のEchizen Guitars、エレクトリックは西村真樹さんが立ち上げたWestvilleのArubaだそうだ。西村さんの名前は何となく覚えていたのに「越前」が出てこず、写真をChatGPTに見せて何度かやり取りしたら、ちゃんと知りたかった楽器名にたどり着いた。詳細の記事はこちらからどうぞ。
acousticguitarmagazine.jp

お寿司はあまり得意ではなさそうだけれど、うどんや焼きそばは好きらしい、という小さな日本滞在情報も披露してくれた。年齢を感じさせない演奏と声、ここ数年は色々な悲しいニュースもあったようだが、そこと音楽を結びつけずに楽しむ様子、やっぱりトニーニョはそうであったほしいな。これからも無邪気に貪欲に音楽を紡いでいって、また来日してほしいなぁ。

最新アルバム等の情報はTower Recordsの媒体からどうぞ。
mikiki.tokyo.jp