ジャンゴ・ラインハルトの伝説〜音楽に愛されたジプシー・ギタリスト

ジャンゴ・ラインハルトの伝説 音楽に愛されたジプシー・ギタリスト

ジャンゴ・ラインハルトの伝説 音楽に愛されたジプシー・ギタリスト


いわゆるマヌーシュ・ジャズを好んで聴くようになってから、この音楽の立役者ともいえるDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)に関する関連書籍を、ネットを駆使して買いあさっている時期があった。まあそんなわけで、この本をCD屋の本コーナーで見つけたときはうれしくてうれしくてすぐに購入したものの、持ち歩いて読むには分厚すぎて、最後まで読み切れていなかった。来年はジャンゴ生誕100周年ということもあり、今年中にきちんと読破すべく一念発起。ここ最近、とくにこの週末はこの本とずっと向き合っていた。

Michael Dregni(マイケル・ドレーニ)氏によるこの本は、ジャンゴの生い立ちと取り巻く環境を時系列で捉えた本であり、当時の時代背景はもちろんのこと、ジャンゴが作った数々の作品が生み出された状況、ライブやレコーディングにおけるエピソードまでが、関係者のインタビューや資料を元に詳細に書かれている。今まで見た本のなかでは一番情報量も多いので、こうした音楽好きにとっては興味深く読める本だと思う。

この本に書かれているジャンゴのライブの様子は、もちろん当時の新聞や雑誌の批評を元に書かれているせいもあろうが、観衆に強烈な印象を与えていたようであること、そのライブは、変化に富んでいて、何度行っても飽きない類のものであっただろうこと、ジャンゴと同じくマヌーシュ・ジャズを支えたステファン・グラッペリ(Stephane Grappelli)との関係性の変化、そして、当時のジャンゴが、どこにでも、それこそユダヤ人やロマを迫害していたWW2中の独軍にも顔がきくほどの偉大なスターであったことを改めて理解した。ジャン・コクトーがジャンゴを題材にイラストを書くだけのことはあったのだね。

ジャズが好きな向きに「マヌーシュ・ジャズが好きだ」と告げると、変わり者のような扱いを受けるので、てっきりマイナーなんかと思っていた。が、ジャンゴは以外に米ジャズ界の大物とも交流があって、ただ影響を受けるだけでなくそれなりに影響を与えていることも知った。

でも、一番楽しめたのは、ジャンゴの作った曲とそれが生まれた背景がわかったことか。たとえば、"Nuage"のような穏やかで美しいメロディが、実は第二次世界大戦の最中に作られ、戦争の苦悩を表現しているときいたら、その頃の空気感やジャンゴの想いを汲みとって聴き直したいなどと、ヘンな欲が出てきてしまう。というわけで、好きな曲を脳内で反芻するには飽き足らず、CD棚からいろいろ引っ張り出して、いろんな曲を改めて聴き直している。また、しばらくこればっかり聴いてしまうんだろうな。