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2008年 カナダ 監督:ブノワ・ピロン(Benoit Pilon)
舞台は1950年代。カナダのバフィン島にすむイヌイットのティービーが健康診断で結核が判明、家族から引き離されて、ケベックのサナトリウムに収容される。見たことのない風景、食文化も違えば、言葉も通じないなかで、良い出会いもあれば、別れもあり。ティービーの軌跡をたどる…。
伝統な暮らしを営んでいたバフィン島から、価値観のまったく違うケベックへいったティービーの戸惑い、サナトリウムで働く「白人」の冷たさに、同室患者の差別意識…。サナトリウムで重症患者がどんどんなくなっていく中で、希望を失い、そしてまた何かに勇気づけられていく…映画の大部分が病院内での出来事なのだが、ほぼ密室のなかで、いろいろな周辺状況を描き出すことで、ティービーや理解ある看護師キャロルの気持ちの変化を、うまく描き出した映画だと思う。何よりも、弱気な時こそ母語が大事なのだ、ということも思い知らされる。
果たして、この映画の最大のテーマ「生きるために必要なこと」は何なのか。必要なことは人によって違うわけで、画一的に図られるものではない。たどたどしいながら、イヌイット語と身振りで一生懸命何かを伝えようとするティービィーを通じて、そのメッセージが強く伝わる映画だった。地味で静かなので、興行的には難しいかもしれないけれども、ダイバーシティを考える上でも、お勧めできる映画だと思った。意外なところでいい映画に出逢えると、うれしい。
この映画は、日仏学院で開催中のケベック映画祭(Cinema Quebecois)のプログラムのうちの1本だが、本当にいい企画なのに人が少なくて残念だと思う。1Fにあんなに人が集まっていたのに、なんで映画はみないんだろう。地味だから? フランコフォニー・フェスティバル(Journees de la francophonie)の一環として行われているようだが、フランス語を学ぶからこそ、フランスだけじゃなくてフランス語圏の文化もしかと知るべし、と思うんだけどなぁ。