私小説 from left to right

私小説―from left to right (ちくま文庫)

私小説―from left to right (ちくま文庫)


日本語が亡びるとき」で世の話題をさらった水村美苗の、横書き小説。しかも、題材は明らかにご自身だ。
親の仕事の都合で渡米し、日本に恋い焦がれつつも帰国のタイミングを失いながらニューヨークで大学院生をやっている主人公「美苗」と、やはり同じ境遇でソーホーに暮らし彫刻家をやっている姉の、英語交じりの長電話を通じて、二人の想いが浮き彫りになっていく。
その描写は、かなりキツく、鋭く、生々しい。そして、時にとても卑屈でもある。
海外に住むということは、自国を再認識することだとはよくいうが、その自国とは言葉であり、人種でもあったりするのだ。そしてきっと、アジア系移民の少ない東海岸、ニューヨークだからこそ、ますます意識させられることもたくさんあったのだろうな、と思う。
英語の単語とカタカナをきめ細かく書きわけしているところも、興味深い。夢中になって読み切れた本。