彼女が消えた浜辺


2009年、イラン、Darbareye Elly、アスガー・ファハルディAsghar Farhadi 監督

この映画は予告編でみてずっと気にしていた。もっとかるーい、夏の日のサスペンスみたいな話かと思ったら、密閉空間の心理戦が描かれていて、苦しい気持ちになった。
ある夏、裕福層な複数の家族が浜辺のバカンスへ出かけた。セピデーは、ここで自分の子供の幼稚園の先生エリーと、自分の仲良しの男アーマドをカップルに仕立てようと企てていたのだ。ところが、あるタイミングでエリーがいなくなった。楽しいバカンスは一気に重々しいものに。そして、これをきっかけに、仲間たちの結束もまたぎすぎすしたものになってくる。
この「みんなが重ねる小さな嘘」が自分も日常でやってしまいそうな、決して悪気のない(そして時に自分を思って無意識にやってしまいような)、生々しいものばかり。
結末も考えようによっては曖昧にもとらえられるような感じだが、下手なサスペンスより心理戦のほうが身近だからこそ怖い。まさに、浜辺の砂にどんどん埋まっていく車のように、嘘のスパイラルから抜け出せなくなっていくのだ…。

彼女が消えた浜辺 [DVD]

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