やっとこの展示会を観ることができた。ナント生まれの映画監督、ジャック・ドゥミに焦点を当てた展覧会。ドウミの作品を5つに分けて紹介するというものだった。パネル展示よりもやはりドゥミ作品のダイジェスト映像に見入ってしまう。ドキュメンタリーの助監督からキャリアが始まっているということで、「ロワール渓谷の木靴職人」というドキュメンタリーなどは、ミュージカル映画の作品の一部しか観たことのなかった私にはとても新鮮にうつった。
一般のファンが知っているのは、やはり1963年~1967年、「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」の時期だろう。素晴らしい音楽とビビッドな映像。この時期の彼の作品を嫌いな人はいないと思う。(もっとも、ミュージカル映画が苦手な人には受け付けられないものだと思うが)。ただ、その後LAに行って作品を撮っていたり、童話の世界にひたって「ロバと王女」「ハメルンの笛吹き」「ベルサイユのばら」などを撮影していたとは知らなかった。また、晩年はヒット作に恵まれなかった、ということも…。きっとミュージカル映画時期の鮮やかさが素晴らしすぎて、その後の展開に観客が付いて行かなかったんだろうなぁ…。
ダイジェスト映像のなかで、私は「ロバと王女」のこの曲が頭から離れなくなってしまった。
ロバの被り物をしているお姫様…? なんだかシュールな香りがする。あいにく映画のストーリーはわからないが、ドヌーヴがこの歌詞に合わせてお菓子を作っている。
「生地を 生地を用意して。ボールに ボールの中に。それ以上おしゃべりはしないで、火をつけて、かまどに火をつけて…」という具合だ。いや、歌詞はどうでもよくて、メロディがいいなぁ、頭に残るなぁと思ってずっと聴いていたのだった。
当然、こういうことをするコメディアンもいる。まあ気持ちはわかる。
おっと話がそれた。
展示室の一角では、映画で使われた名曲が流れている。ジャック・ドゥミは偉大だし、彼が選んだミシェル・ルグランも偉大なのだ。好きな曲はたくさんあるけれど、"La Chanson D'un Jour D'été"もいい。
「夏が過ぎ去った時、季節が過ぎ去った時、夏を惜しんで溜め息をつくことしかできない。でも、冬がやってきた時に、あなたの心が凍りついた時に、夏の日思い出すためには、冬も好きにならなきゃ。幸せになるためにはなんでも好きにならなきゃ!」という感じ? 美しいメロディの展開、ほろっと来ちゃう前向きな歌詞に、聴くだけでぞくっとします。