北部フランスに赴任した郵便局員が繰り広げる暮らしを描いたコメディ映画"Bienvenue chez les ch'tis"から10年は経過しただろうか。フランスで大ヒットしたのを知り、フランスの映画館に観に行ったことを記憶している。
先日飛行機に乗っていて、偶然「あのシリーズに間違いない」という映画を見つけた。しかも、主演はあの北フランス、ノール=パ・ド・カレー地域圏のなまり「シュティミCh'timi」をがっつり話す、ダニー・ブーンDany Boonだ。
Dany Boon監督、2018年、フランス
ヴァロンタンValentinとコンスタンスConstanceは、それこそParis Matchの表紙にもなるようなレベルの、有名なデザイナーのカップルだ。パリで尖ったデザインのイスなどを作っており、受賞歴があったりする。しかし、ダニー・ブーンが演じているヴァロンタンには、秘密があった。孤児だと言っていたが、実は、北フランスの出身なのだ。ところが、展示会にサプライズで北フランスの一家が現れたことで、あやうく本当の出自が明らかになりそうになる。
ある日、ひょんなきっかけで記憶が過去に戻ってしまったヴァロンタンは、突如シュティミを話し出す。そこにかつてのエレガンスは残っておらず、周囲の人々は戸惑うのだった...。
基本的にコメディだが、シュティミのパンチ力は健在。北部出身でもないのにこの言葉を話すことができる人、尊敬する。ちなみに劇中でも、新しい記憶を失ったヴァロンタンとコミュニケーションをとるべく、パートナーのコンスタンスが一生懸命シュティミを勉強するシーンがあるが、美貌が台無し、というレベルの言葉だ。
最後、エンドロールとともに、"How I love ya.....!"というような曲をシュティミで"Que j'te ker, j'te keeeeeer!"とアツく歌うシーンがあるが、これはJohnny Hallydayの"Que je t'aime"のシュティ語バージョンということらしい。ジョニー・アリディが亡くなったのが2017年12月で、この映画の公開は今年の2月。なんというタイミングの良いトリビュートだろうか。
もうひとつ気になったのは、おしゃれなデザイナーたちがミーティングで使うパリの回転寿司屋さんの名前。ひらがなで「かも」って書いてあるのだが、アルファベットではKAMOKOとなっている。日本で「かも」といえば、騙されやすい人のような印象がある。これもコメディの一環? だれか教えて~!