松竹創業百三十周年 猿若祭二月大歌舞伎で「壇浦兜軍記:阿古屋」「江島生島」「人情噺文七元結」


江戸歌舞伎芝居の始まりといわれているのが、猿若勘三郎、つまり中村勘三郎の先祖だったらしい。というわけで今回は中村屋が主役をはる猿若祭に行ってきた。勘九郎勘三郎も久々に観る気がする。そして、何よりも楽しみだったのが、玉三郎の阿古屋。印象に残ったところを以下に記録しておこうと思う。


『壇浦兜軍記』阿古屋
シネマ歌舞伎の時と同様、玉三郎の阿古屋、そして菊之助秩父庄司重忠役だ。
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恋人だという景清の行方を知っているだろうということで、菊之助と種之助が演じる岩永左衛門に呼び出された阿古屋が、「拷問」ということで心を乱さずに琴、三味線、胡弓を演奏できるかどうか、チェックされる場面が有名。その前に、拷問担当として出てくる10人くらいの「竹田奴」という拷問部隊のコミカルさも良かった。まるで、チャーリーとチョコレート工場ウンパルンパのような、わちゃわちゃした感じ。そして、 種之助の人形振りがすっごく良いアクセントになっていたと思う。まぶたの上に目が描かれたりしているのだが、なんとなく「低燃費少女ハイジ」の絵を彷彿する感じとか、胡弓が楽しくって、火ばしを楽器に見立てて浮かれちゃう感じとか...

とまあ色々なところに目がいっちゃうが、もちろん玉三郎の楽器のお手前、そしてそれを盛り立てる清元の方々、長唄杵屋勝四郎と勝十郎も素晴らしい。間合いが取れる部分はともかく、バチの振り幅を見ながら計算でもしているのかな、離れた場所から玉三郎の演奏に合わせていくその技量に感動した。もちろん、玉三郎の身のこなしの美しさも健在...あの豪華な衣装、重たいんだろうなぁ。
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江島生島(えじまいくしま)
冒頭部分では、真っ暗な中に長唄連中がぼーっと浮かび、次に小舟に乗った大奥づとめの江島(七之助)と人気役者の生島(菊之助)が登場する。1714年に実際にあった江島生島事件というものが題材になっているらしい。前半は夢の世界、後半は、生島と通りすがりの旅商人(萬太郎)、そして海女さんたちと戯れた後に、現実に気がつく生島。海女さんのキャピキャピ具合と、雨の音、そして江島のプロポーションの良さと、その七之助菊之助との立ち姿の美しさが妙に印象に残っている。
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人情噺文七元結(ぶんしちもっとい)
勘九郎演じる左官屋の長兵衛は、博打とお酒が大好きすぎて借金を重ねてしまい、結果年越しが難しい経済状態。七之助演じるお兼とも争いがたえない中、娘のお久(勘太郎)が自ら吉原の角海老に身売りをしてしまう。途中、ある出来事の中で長兵衛が出してくる人情味にドキッとさせられる。解説がなくても面白い作品、かつ、ネタバレしない方が楽しいと思う。あまり事前勉強をせずに観るのが良いだろう。
まず驚いたのが、真っ暗な中響く勘九郎の声...まさに勘三郎の声のままで、びっくりしてしまった。これは敢えて声を寄せているのだろうか、それとも自然に似てきているのだろうか。いかにも江戸っ子という気風の良い喋り方も最高。もう一つ印象に残ったのが、さっきまでにお美しい役を演じていた七之助の小汚いお兼役というギャップと、夫婦喧嘩の激しさw。これは、兄弟だからできる演技ではないだろうか。お互い本気で棒なんかで殴り合っていたように見えたけれども、すごく良かった。尾上松緑中村芝翫のような大物が最後にちょこちょこっと出てきて、中村屋の繁栄を寿ぐセリフや、家同士の仲の良さをちょいちょい混ぜてくるのはご愛嬌。まさに猿若祭にふさわしい演目だったと思う。
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いずれの演目の素晴らしく、二月大歌舞伎は後悔なし。4時間あっという間だった。今回もイヤホンガイドのお世話になったが、プログラムを読むよりも歌舞伎の理解度が高まった。しばらくは歌舞伎鑑賞のたびにお世話になります。