ローマで語る(塩野七生×アントニオ・シモーネ)

ローマで語る

ローマで語る


イタリア史の著書で名高い塩野七生とその息子が映画について語ったものを書き起こした本だ。イタリア映画とアメリカ映画を中心に他愛ない話が繰り広げられるのだが、息子さんがイタリア語と英語しか話せない関係で、英語で展開した会話を英語で原稿にし、それを翻訳したらしい。そのせいかどうか、どうも会話の言葉遣いが親子間ともオフィシャルともつかない微妙な文体になっており、違和感があったかな。
でも、内容はおもしろいというか二人の視点が斬新だ。映画好きなのだけれども、好きなクセに熱すぎない議論がいい。イタリア映画の話だけでなく、文化論も含んでいる。また、おとといみたトルナトーレ映画の見方を補完してくれるような議論も収録されていた。

「主役はどんなに演じていてもその本人が出る」「"Stronzo"と"figlio de puttana"の違いは、"ちきしょう"と訳されるが、前者には笑えない場合、後者は笑いながら言う」「サッカーは戦いだ」など、なるほどと思うことがたくさんあった。もっとも、評論している映画はミニシアター系が多いため、とくに映画オタクにオススメの本かも。
そうそう、「いい本や映画とは、一度でわからないようには作られていないが、二度みるとさらに深く理解できるように作られているもの」というアントニオさんの言葉にも納得だ。