ファイアーウォール(ヘニング・マンケル著、柳沢由実子訳)

ファイアーウォール 上 (創元推理文庫)

ファイアーウォール 上 (創元推理文庫)


ファイアーウォール 下 (創元推理文庫)

ファイアーウォール 下 (創元推理文庫)


スウェーデン南部の町、イースタ署の管轄下にて、14歳と19歳の女の子がタクシーの運転手を襲って殺害するという事件が発生した。ヴァランダーが取り調べの際に容疑者を殴った瞬間の写真が、ある記者によって掲載され、ヴァランダーの社内での人間関係も問題が生じる事態に発展…そして、捜査の過程で地元のハッカーへ調査依頼するような事態も起こる。
伝統的な捜査手法と、ITを駆使した犯罪捜査が共存し、かつ複雑にからみあった面白い内容だった。昨今、ITシステムというのはインフラにも密接につながっているが、そのことを実感させる事件の連鎖に夢中になれる。しかも、この小さな町でおこった犯罪が、意外に国際問題に絡んでいくあたりも面白く、クルト・ヴァランダーシリーズのいつもの期待を裏切らない。
シリーズを読んでいる人間にとってたぶん驚きだったのは、ヴァランダーの署内での人間関係が予想外の方向に向かったことと、ヴァランダーの娘さんの意外なる人生展開か。ますます続きの話が気になるというものだ。