- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: 文庫
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主人公の男、河野勝男は宝くじの当選をきっかけに福井県の敦賀市に移住した。ある日ファンタジーと呼ばれる神様のような存在が現れる。その直後、河野はかりんという、ナナ・ムスクーリ似の女性と出会い、つきあいを始める。元同僚で仲良しだった同僚の女性、片桐が自分に思いをよせているだろうことをどこかで気が付きながら。そんななか、ひょんなことから河野は片桐、ファンタジーと3人で旅をする。河野は、旅の中で自分の過去にふれるものの、恋人となったかりんに自分の過去、そしてそこから派生するセックス嫌悪の話がどうしてもできないのだ。
読みやすいながら、どこか哲学的な発想が垣間見られる本。そして、車のBGMやら街角で流れる音楽、河野のくちずさむ歌などにディテールがあったりするのは面白い。テーマは「孤独」なのかな。福田和也さんの解説曰く「他者に甘えない、もたれかかることのない個人は、いかにして祝福されるのか」というのがコアテーマらしい。何度も読むとその深い部分がわかっていくのかもしれない。
ちなみに、コウノカツオという名前を、片桐が「カッツォ・コーノ」というあだ名で読んでいる。そもそも主人公のこの名前、苗字は女性器、名前は男性器を意味しており、イタリア人が笑うかもしれない、隠語テンコモリの名前なのだ。なのにいちいちカッツォと呼びかける片桐…なかなか大胆なことです(笑)。
ちなみにイケてない神様、ファンタジーが、エアロスミスの音楽に「いかがわしい」と不満を漏らし、カーティス・メイフィールドがお気に召すというあたりはくすっときた。そりゃカーティスこそ神だけれども、エアロもなかなかいいですぞ。