フランス、イル・ド・フランス地域圏のコミューンであるメゾン=ラフィットMaisons-Laffitte で、毎年行われているジャズ フェスティバル「Maisons-Laffitte Jazz Festival」。16回目となる今年はコロナの影響で開催が危ぶまれていたようだが、ギタリストで本イベントのディレクターを務めるサミュエル・ストルゥークSamuel Stroukの強い情熱により、Digital Editionとして7つのコンサートのオンライン開催を決行したという。
ライブは、メゾン=ラフィットにある古い教会の中で、5月27日、28日の2日間でレコーディングされた。フランスでは3月以降外出制限が続いていたが、5月末はその厳しい制限が解除されてから2週間ほど経過した頃だ。スタッフはみんなマスク姿、健康に最大限の配慮をしての録音だったという。
事前に撮影されたライブ映像は6月12日〜21日にかけて、FacebookやYouTubeチャンネルで公開された。このフェスティバルには毎年マヌーシュ・ジャズの演目が一つは含まれているが、2020年のデジタル版では、Biréli Lagrène Trioが登場した。マヌーシュ・ジャズファンなら、ビレリ・ラグレーンBireli Lagrene、アドリアン・モワニャールAdrien Moignard、それにWilliam Brunardウィリアム・ブルナールという安定感あるトリオに気を惹かれるはずだ。技術が高すぎて身体にすぅっと馴染むこのメロディ、ぜひ多くの方々に聴いていただきたい。ジャンゴサウンドのスタンダード、”Troublant Boléro”ももちろん良いが、ジョビンの"Wave"でちょっとブラジルのムードに身を任せるのもいい。観客代わりの、蛍光灯のピクトグラムっぽい観客人形も、雰囲気作りに一役買っている。
Bonus Trackとして公開されているOn the Green Dolphin Streetにもぐぐっときます。
フランス語がわかる方は、ビレリへのインタビュー映像も。外出制限中にどのように過ごしていたか、新作の説明、今回の無観客ライブの感想等、いろいろと語っている。
このイベント、最終日がフランスの音楽の日Fête de la musiqueに設定されているのは偶然か、それともコロナによりライブ活動が制限されたミュージシャンに向けたメッセージなのだろうか。このトリのライブを務めたのは、フランスの重鎮ドラマー、Andre Ceccarelli アンドレ・チェカレリのトリオだった。こちらも文句なしの演奏だが、よく見ると、ベースを務めるのはビレリ・ラグレーンをはじめ、マヌーシュ・ジャズのライブでも活躍しているDiego Imbert ディエゴ・アンベールではないか。マヌーシュ・ジャズファンは、こんなところでも動画ライブが愉しめるかもしれない。