ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)の息子であるバビク(Babik Reinhardt)の息子、つまり、ジャンゴのお孫さんがこのダヴィドDavid Reinhardtである。今は教会での活動に忙しいようだが、このドキュメンタリーが公開された2010年頃、ダヴィドはドラムのヨアン・セラYoann Serra、ハモンドオルガンのFlorent Gacとともに、自分の名前を冠したトリオををやっていた。そこで、パリ10区にあるアルハンブラ劇場(l'Alhambra)で行われたライブとともに、ダヴィドのインタビューが収録されているのが、このドキュメンタリーだ。10年ぶりくらいに観ることができた。
彼の話をする際に、やはり偉大な血筋の話は避けられない。インタビューは、どうやってこのトリオのメンバーに出会ったのか、というところから始まるが、なんでもお父様であるバビクとともにニースに住んでいた折に、すでにドラマーとして活躍しており、ジャン・マルク-ジャフェJean-Marc Jafet と活動していた若き日のヨアンと出会い、友達になったという。
だからといって、ジャンゴがマヌーシュ・ジャズだけでなくデューク・エリントンとビッグバンドで演奏したり、晩年はエレクトリックに走ったりしているように、ダヴィドも、パット・メセニーのようなジャズギターやロックギター、エレクトリックのビレリ・ラグレーン、ブラジル音楽などにも興味を持っているという話をしている。この時期のバンド編成も、「ヨアンと仲良しだったし、ギターとドラムでトリオをやりたかった」ということでできあがった、というわけだ。
印象的なのは「ギターにまつわる一番美しい思い出は何?」ときかれたDavidが、「父と弾いたこと」と応じるところだ。ダヴィドはバビクを素晴らしい作曲家としても尊敬しており、このドキュメンタリーの中でもバビクが作った"Une Histoire Simple"という曲を演奏していた。Davidは、この曲を2004年にリリースしたギタートリオのアルバムに収録しているのだが、やはり素晴らしい曲は語り継ぎたい、という思いがあるみたいだ。
ちなみに原曲はこちら。
どうもジャンゴの偉大さの前に、57才という若さでこの世を去ったバビクの存在は、なかなか思い出されることはないのかもしれないが、ダヴィドのような素敵な息子が気負わずにバビクの素敵な楽曲も紹介してくれるといいね。ちなみに私は、Django Reinhardtのドキュメンタリーで使われた、バビクの"All Love"という曲が本当に好きで、これを聴くと何か涙が出そうになる。
ダヴィドのドキュメンタリー、ぜひ一度見てみてほしい。