木彫り熊の申し子  藤戸竹喜〜アイヌであればこそ〜@東京ステーションギャラリー

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昭和の時代によく家にあった、熊がシャケを咥えた状態で佇む木彫りのクマ。あれを発見して以来、あの「木彫りの熊」は私の心の片隅にいつも残っていた。先日尾道に行った時には、それを二色でリメイクペイントしてパンダにしているお店なんかも見つけたり。
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お土産物として使われた木彫りのクマは、北海道二海郡八雲町がルーツだという説と、旭川でも八雲町と同時期に発展してきたという二つの説があり、最近はプチブームらしいというのも耳にはしていた。

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この展示会の存在も、ソーシャル上で教わったもの。藤戸竹喜(ふじとたけき)のことはまったく知らなかった。藤戸は、旭川育ちで、アイヌ民族の木彫り熊職人だった父親に習って熊彫り職人になったらしい。一時期は、阿寒湖のほとりで「熊の家」という土産物屋を営んでいたこともあったらしい。初期の頃からの作品が並んでいたが、すごく繊細で躍動感があって圧倒された。毛の先にまで命が宿るようなそんな作品ばかり。クマばかりかと思いきや、海の生物や、元々彫りたかったらしいオオカミの作品、そしてアイヌの人々や暮らしを表現した作品も多数。こんなに緻密で完璧な彫刻なのに、下がきをせずにいきなり彫り出す、というのには驚いた。

80歳過ぎてからの作品で、「動物とアイヌと和人の物語を残したい」という気持ちを具現化した「狼と少年の物語」もすごく良かった。蝦夷オオカミの毛色のようなグレーがかったものを表現するために、土に埋まっていたタモのような「埋もれ木」を使う、というのがまた印象的であった。

基本事前予約制ときいていたので、恐る恐る飛び入りが可能かきいてみたら大丈夫だった。こんないい展覧会なのに、当日入場可能なのにびっくり。というわけで、もっと多くの方に存在を知っていただきたいと思った。ご本人による土産物屋の木彫り熊コレクションも必見です。
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