植田正治の写真に初めて出会ったのは、いつのことだったか。鳥取砂丘で家族を総動員して撮影した写真がすごく印象的で、その話を当時の職場の上司にしたところ、植田氏の著書をいただいたのだった。
ただ、当時この方が鳥取県境港市生まれだということは認識がなかった。ましてや、そもそも大山が伯耆町と近いことも、伯耆町に植田の美術館があることも知らず。今回、山登りの帰りに車で松江方面に向かう途中、植田正治写真美術館の看板を見かけて植田作品に興味があったことを思い出し、同行の方に無理をいって連れてきてもらったのであった。美術館のすぐ近くからは、先ほどまで登っていた大山の姿がよくみえる。美術館の建屋は、島根県出身の建築家、高松伸氏によるものだが、まるでヨーロッパにいるような気分にさせるようなものだった。
当日ちょうどやっていた企画展は「3つのキーワードで探る 植田正治の世界」というもので、風景、人物、静物という切り口で彼の作品が展示してあった。彼の悪品は人物写真が好きなのだが、どの作品も非常にアート色が濃くて、改めて新しさを感じた。何よりも、戦前からモダンな感覚を作品に反映していた、ということに改めて驚いたのであった。
植田正治をまったく知らなかったという私の友人は、植田の作品を楽しんだのはもちろんのこと、大山が美しくみえる建物にも感激していた。さらに後日植田正治が福山雅治のジャケット写真を撮影したことなどを知って、こちらの企画展に行けなかったことを悔やんでいた。
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伯耆町に暮らすアマチュア写真家たちの作品も展示してあったが、なんとなく植田調を狙ったような作品が多かったことが微笑ましい。決して大きく美術館ではないが、大山を見つめてゆっくりできるような場所もあるのがよい。植田作品を知らない人も、この写真美術館はおすすめ。鳥取県に来た際には、ぜひ。