
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/04/09
- メディア: 文庫
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なんとなく未知なる言葉が大好きな私にとって、ロシア語会議通訳をされていた米原氏のエッセイは、多言語・他文化の香りがして大好きだ。この本は、パンツやふんどしをめぐる、実体験と調査をもとにしたエッセイだ。
幼少時に海外で暮らした経験のある米原氏の、パンツやらふんどしにかかわるエピソードがおもしろいが、これも、彼女が好奇心旺盛で、その好奇心を惜しげもなくさらすからこそひっぱりだされたエピソードばかりだ。だって、イエス・キリストのはいているものがパンツなのかフンドシなのか腰巻なのか、その疑問を先生にぶつけられる子供はそうそういないだろうし、アダムとイブの股間に描かれたイチジクの葉(ちなみに、この本を読むまで、勝手に柏の葉だと思っていたが)がどういう状態でくっついているのか、実験したり、ここまで調べたりする、という輩もなかなかないだろう。
個人的にうれしかったのは、ここ最近、女性ファッションで人気を盛り返していた「サルエルパンツ」の語源に出会えたような気がしたことだ。「NKVDの制服からハーレム・パンツまで」の項に、アラビア文化圏の伝統的脚衣を指すペルシャ語「シャルワール(Shalwar)」のことが書いてあり、ふと「サルエルパンツ」を思い浮かべた。そう、「アラジン」の登場人物やコサックダンスの踊り手が着用している、あのカボチャパンツみたいなヤツだ。アラビア世界じゃ「スルワール」というらしいから、これがなまって「サルエル」なのかなぁなどと考えて、勝手に満足したのであった。ま、あくまでも想像だけれども。