La Graine et le mullet,アブデラティフ・ケシシュ監督、フランス・チュニジア、2007年
舞台は南仏の港町セットSète。主人公のスリマーヌは、マグレブ系のフランス人で、港のドッグで船の修理工として働いている。離婚した妻との間には3人の子供がおり、新しい恋人はホテルを経営しているのだが、彼が失業したことでなんとなく関係がギクシャクしている。そんなスリマールを励ますのが、義理の娘リムだ。
ある日、スリマールは、改造した船でクスクスのレストランを始める計画をたてた。しかし、レストラン経営経験もなく、年もとったスリマールに、行政は冷たい。さらに、レストランのメイン料理クスクスを提供するのが元奥さんということもあり、恋人も機嫌が悪い。そんなスリマールを助けるリム。レストラン開店にこぎつけるために、スリマールは家族や親戚の協力を得て、地元の人やレストランオープンにあたっての有力者をレストランに招待するのだった。
しかし、この料理を出すところで、とんでもないアクシデントが起きるのだった…。
冒頭に出てきていきなり仕事中に事をはじめるスリマールの息子マジドは、ロシア出身の奥さんがいるにもかかわらずとんでもない遊び人というか家庭に収まらない人で、これが大事件の元になる。フランスにおける移民社会の結びつきがいいようにも悪いようにも表現された映画のように思えた。そして、その濃すぎる家族の結びつきに、アラビア語まで片言で覚えてなじんでいるフランス人もいれば、まったくなじみきれていないロシア人もいたりして、その対極の関係もおもしろかった。監督の方がマグレブ系だからこそ、こんなにリアルなストーリーができたのかもしれない。とくに、スリマール元妻によるおいしいクスクスを囲んで家族が食事するシーンと、リムがレストランで踊り狂うシーンが圧巻だった。
この映画の舞台のSèteというのは、ジャズフェスが行われるあのSeteのようだ。移民系の人々が多くすむエリアなのだろうか。
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