- 作者: 川上未映子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/11/13
- メディア: 文庫
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日常が慌ただしかったりすると、時間が途切れて、本を読むまとまった時間が取れない。そこで手に取ったのが芥川賞作家である川上未映子氏のデビュー作であるこの本だ。
随筆集であり短編てんこもりなのだが、3話目あたりから「ブログで書いてたのかな」と思いはじめた。あとがきを読んで知ったが、本当にブログで書いていたものを集めた本だったようだ。
ただし、そこらのブログとは全然違う。彼女が目を付けた日常の事象は、とても身近なことである。虫歯とか枯れそうな植物だとかディズニーランドの風景だとか体毛だとか。でも、そこから展開される世界観というか妄想というか発想は、並はずれたものがある。その背景には、彼女の育ちなんかも関係してくるのではないかしら。
とくにひっかかったもの。「思い出は君を流れる」という詩があって、そのなかのこんな言葉に心動く。一部抜粋しとく。
色んなことを色んな風に/いっぱいいっぱい喋ってきたけれどそれはしかし/涙をだらりとさせられるのは/君が喋らんかったことのほう/君に喋られへんかった言葉のほう
あとは、「私はゴッホにゆうたりたい」という話。生きているうちに認められなかった一芸術家に対する想いが綴られている。誰からも相手にされなかったのに、好きなものに死ぬまで向き合う生き方に対する激しい共感は、自分もアーティストだから、なのかな。
あとがきまでが川上節。大阪弁で綴るエッセイなんて自分好みじゃないと思っていたら、その感性にやられれしまった。こういう表現ができる人は本当にすごいと思う。