ehamiku "To-kyo"

「群像」の4月号で、安斎昌幸さんという方が「ミクさんまじ天使」という随筆を寄せている。この方は、ボーカロイド(通称ボカロ)の曲を専門にかけるラジオ番組に携わっているらしい。世の中、自作の曲をミクに歌わせて発表している人がたくさんいるので、そうした曲を紹介しているのであろう。
なんでも3月9日は「ミクの日」ということで、ボーカロイドである初音ミク(音声合成のソフトによる女性キャラクター)の関連イベントが各地で行われたという。その時期に合わせての「群像」への執筆ということだったのだろうが、ボカロがいかに10代の女性に人気が高いか、そして、J-popにある紋切型の歌詞がもはや彼女たちには響かないという現実を述べていた。玉石混淆ではあるが、何かと感謝ばかりしている安易なJ-popワールドと異なり、歌詞の世界はもはや文学的であり、こうした「神曲」は、その歌詞が文学や哲学になり、やがて宗教となり、将来音楽の教科書に載るだろう、と締めくくっている。
一応IT業界にちょっと携わっているから、初音ミクのことは知ってはいたし、台湾あたりで初音ミクの袋を持った人を見つけて、「海外でも人気あるんだ」と漠然と思っていたことはある。が、聴こうと思ったことはなかった。で、ふと思い出した。だいぶ前に友人の親友で私も一度お目にかかったことがある人が、作詞作曲が趣味とかで、その作品を聴いてみてほしいとCDを渡されていたのであった。ただ、ジャケットの雰囲気からあまり聴く気分にならず、そのままになっていたのであった。というわけでこの随筆をきっかけに聴いてみることにした。

to-kyo

to-kyo


この声は…相対性理論っぽいかな、いや違うか。とにかく聴いたことのある声。なんだろう。かわいらしく爽やかな感じ。で、曲が案外いい。期待したよりずっとずっといい。「三年間」「季節はずれの入道雲より」という曲が好き。
雰囲気はだいたいこんな感じです。

歌詞に「ディスクユニオン」が出てきてしまう、「つれてって」。

私が音楽を歌詞から注目することは少ないので、安斎さんの褒めポイントとはちょっと異なってしまうが、私はこのCDが好きになった。
願わくは、私みたいによくわかっていない人がいだいてしまう、ジャケットなどのデザインから連想する「アニメっぽさ」を取り除けば、もっともっと裾野が広がるのではないかしら。たとえば、ehamikuの曲をリアルな歌詞がカバーしてもいいのではないか、などと思った。
結論。食わず嫌いはいけませんね。