カッパドキヤの夏(柳宗玄)


中世美術の専門家であり、フランス留学経験もある著者が、遺跡調査のために中央アナトリア地方、いわゆるカッパドキアやその周辺の村に滞在した時の話をまとめたもの。もともと朝日新聞に連載していたそう。
時は1966年! 私もアンカラからギョレメのあたりまでバスで横断したことがあるので、「塩湖の湖畔通過に1時間」なんていう話をきくと、「今も変わらぬ風景があるエリアなんだ」ということを実感する。
著者が村人と暮らすことで、色々な出来事が発生する。うるさい通訳やちょっと行動が不振な村長さん、いたずらした子供たちとその制裁や、病人の子供を町に運ぶ話、騙された話に、騙し返そうと画策する話、キリムや女性の前掛けの美しいものを入手するために奔走する話…筆者がとくにいい人ぶることなく、腹を立てて村人に対抗しようとしたりして、その人間くささがたまらなく面白い。
この人はトルコでたくさんよい出会いをして、トルコが好きになったに違いない。
あとで著者のことを調べたら、柳宗悦の次男とのこと。道理で、古いキリムや女性の前掛けなど、トルコで入手しようとしたものの見立てが、素人とは違うわけだ…。