オレンジと太陽


2010年、英豪合作、ジム・ローチ監督、Oranges and Sunshine

英国政府は、13万人以上の恵まれない子供たちや、あるいは本当は両親が健在なのに、嘘によって両親が死んだと知らされ、孤児として仕立てられた子供たちを、オーストラリア等に不当に送り込んでいたという。この、「児童移民制度Home Children」を告発して、両国政府から謝罪の言葉を引き出すに至るとともに、親から引き離された当時の子供たちの親探しを手伝った、ソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズを主人公にした、実在の物語だ。
この移民制度に加担したのは国家であり、また、孤児院にて貧しい子供たちをひどい環境にさらし、挙句の果てに暴行を加えたというのがローマ・カトリックを母体とする宗教法人だったりするものだから、マーガレットはひどい暴行や嫌がらせを受け続けることになる。それでも彼女が「孤児だった人たちがだれなのか、ということを明らかにする」というミッションのために、黒い歴史を暴き続けることができたのは、協力的な家族、とくにパートナーのお陰だといえる。
主役のハンフリーズ夫人を演じたのはエミリー・ワトソン。すごく貫禄があるとともに繊細さを持ち合わせた役だったが、まさかの「奇跡の海」のあの人!ということに気が付き驚いた。あの頃はもっと若々しさが全面に出ていたのに、すっかり渋い役が似合う人になったのだな。
ケン・ローチの息子だということを知らずに観たが、ケン・ローチ映画ほどの悲痛さがないというか、悲痛な歴史の中にも光の部分をきちんと描き切った、良い映画であった。
ハンフリーズ夫人の著作「からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち」も読みたいな。