- 作者: 広谷鏡子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: Kindle版
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この小説もけっこう切ないドラマチックな話だった。主人公の女性、倫子が偶然出会った、妻子ある男性とのディープな恋愛と、彼の病による死までの4年間弱にわたる関係の中での、心境の変化を時期を区切って描写したもの。妻子ある男が、亡くなった後に妻にあてた遺書を偶然読んでしまったことで、彼女は相手が、自分の人生のなかで深くかかわった2人の女性に対して、それぞれどんな思いだったのかを悟る、という話。よくある不倫を描いた小説といえば、たとえば「失楽園」のようなものを思い出すのだけれども、官能的な描写がないところが逆にリアルだ。また、男が亡くなった後、彼女が男に宛てた手紙を入手して、その内容をみながら過去の心境をふりかえっていく、というのがまたちょっと古風でよかった。
一般的に純愛は悲劇が多いけれども、救いは、"With or without you, I can't live"というU2の曲のオリジナルの歌詞と異なり、「生きていける」つまり"I can live"であると彼女が結論付けたことだろうか。
なお、この曲は何かとロックの名曲が出てきたのも印象的だった。私は歌詞至上主義でもないので、ロックの名曲で思い入れがあるものは少ないのだが、これらの曲も何か深い意味を持つのだろうか。今度じっくり聴いてみようと思う。