レター教室

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)
はじめは、文豪三島由紀夫がちょっと現実的な手紙の書き方を指南してくれる本だと思ったのだ。ところが、実際は手紙の事例のためだと思っていた5人の登場人物の関係性がちゃんとつながっているという、実際は書簡小説であった。なんという粋な小説なんだろう。
登場人物は市井の人のはずなのに、ところどころ知性が見え隠れするのは三島ならでは。
そして、「作者から読者への手紙」というところにいろいろなエッセンスがつまっている。
「世の中の人間はみんな自分勝手の方向に向かって邁進しており、他人に感心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙には生き生きとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。」
…小説とはいえ、ある部分では実用書でもある。たとえその文例を一切手紙に応用できなくても。