鎌倉在住の観世流能楽師で、自ら教育者として教壇に立っていた中森昌三氏による教育論の本。時に差別的といわれそうな極論も織り交ぜながら、かなり自由に思いの丈を綴った本だった。要は今の(というか執筆当時の70年代後半)の教育は、自由や平等を履き違えた結果とんでもないことになっている。教育は稽古であり、見習うべきだ、という話だ。
この中のけいこに関する論議が役立った。
稽古とは、高度な内容を自分の意思で有識者から伝授してもらうことをさす。夢の世界に身を置くことで、雑事を忘れ気分転換をするものだ、とのこと。
では、そのルールとは何か。中森氏によれば、1)師匠の言うことは全て正しく、全面的に従うべし。
2)一度選んだ先生は変更しない
3)先輩後輩の序列は守る
4)先生は公平であるべし
5)弟子は習うものの好みを言うことは極力遠慮すべき
とのこと。この項目が何故そうなのか、中森氏の心の声も本には書かれている。
先生を尊敬し、信心深い人こそ上達がはやい。先生もお稽古では絶対の存在であるべきだが、権威を錯覚せず、稽古場を離れたら日常に戻らなければならない。不易なるもの、つまり整理体系化された真理を学ぶのがお稽古。上達のためにおさらい会は必須。おさらい会では、順序や節が完璧なのが当たり前…など、耳の痛いこともあれど、お稽古事について考えるよいきっかけになった。
こんなことを踏まえて、お稽古事も頑張りたいね。