さよなら、人類。(でも、「たま」じゃない)


スウェーデン、2014年、En duva satt på en gren och funderade på tillvaron、ロイ・アンダーソン監督

ロイ・アンダーソン監督によるコメディ。かなり癖がある映画だ。「散歩する惑星」「愛おしき隣人」と並んで“リビング・トリロジー3部作”と呼ばれているようだが、そんなことはつゆ知らず。この映画が初めてのロイ・アンダーソン体験となった。
まず、登場人物がなんとなくアダムスファミリーの人たちみたいに顔がほんのりと白塗りになっていて、「???」となるのだが、見続けると、これがこの映画の規則のようなものだということがわかる。始まりから人が死ぬし、しかも空気が読めない行動をとる登場人物がたくさん出てきて謎めいているのだが、やがてこの映画の主人公が登場する。サムとヨナタンという、いかにもさえない、面白グッズのセールスマンだ。この二人に絡めて、色々な人たちが登場する。39の話が収録されているようだが、短編としても楽しめるだろうし、別のスキッドだと思っていたらそのバックに前の話の人たちが登場してきたりして、細部をみればまたそれで楽しめることができるように思えた。
彼の映画の撮影方法には独特のスタイルがあって、そのこだわりを知っていれば、また違った楽しみ方ができるかもしれない。
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固定カメラで撮影していて、しかも1スキット1テイクらしいのだが、その分人物の立ち位置まで計算されつくしているように思えた。好きだったシーンは、謎のフラメンコぽい踊りを教えている先生と、明らかにセクハラっぽい仕打ちを受けている若い男性の話。あまりにもひどいのだけれども、間合いや他の生徒の無関心っぷりが笑いを誘う。

あとは、"Blood on the Risers"という、軍の部隊が好んでテーマ曲に使っていた音楽の替え歌で、バーの店主が自分のお店の売り込みをする。「ロッタのお店じゃたったの1シリングでお酒が飲めるのよ」と。でも、そこで客が切り替えす。「ポケットに1シリングもない。ロッタのお店で飲んでいる場合、どうやってお支払いすればいいのか」と。

ロッタの切り替えしはこちら。


同じこと言うのに表現が細かく違っているところに、こだわりを感じる。

そもそも、このセールスマン二人組が本当にイケていないのに、一生懸命終わりグッズを売っている。全然魅力的に感じないし、当然売れない。彼らは踏んだり蹴ったりの身の上だ。でも、彼が絡む人々がなぜか悲しく笑える感じがするとともに、人の嫌なところも見えてくる。セクハラっぽい話、差別っぽい話が続々でてくることにも驚くが、「人類」のあたりから、だんだんコメディ感が薄くなっていく。だれか詳しい人に映画を解説してもらえると、もっと別の角度から楽しむことができるのだろうか。

そして、絵画を意識した場面展開らしいので、絵に詳しければさらに別の楽しみ方ができるのではないかと思った。

このタイトルをみて、たまの「さよなら人類」を思い出した。作詞作曲の柳原さんに許可をもらって、映画の邦題もこのようになったらしい。原題の直訳は、英語タイトル"A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence" から推測するに、「存在について考えながら、小枝にとまるハト」みたいな感じなんだろうか。直訳したら、興業が成立しなさそうなので、よい邦題を付けたものだなぁ。
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