フランスでマヌーシュ・ジャズのバンドが多くいる地域は・・・と問われれば、パリ以外だとアルザス地方が思い浮かぶ。ドイツ国境で、ビレリ・ラグレーンBireli Lagreneやアコーディオン奏者のマルセル・ロフラーMarcel Loeffler, ギタリストのマンディーノ・ラインハルトMandino Reinhardt、2011年に 亡くなったがZillisheim出身のミト・ロフラーMito Loefflerはアルザス地方をベースに活動していた。チャボロ・シュミットTchavolo Schmitt のように、生まれはパリだがその後両親の出身であるストラスブール(アルザス)に戻ってきて活躍するようなケースも。
そんななか、ブルゴーニュ出身で活躍を始めたトリオ "Adrien Macro Trio"が、ニュースで紹介されていた。
リーダーのアドリアン・マルコAdrien Marcoは、フランスのヨンヌ県(ブルゴーニュ地域圏)出身。17歳の時独学でギターをはじめてジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardtの音楽に魅了されたという。そして10年前の2008年に、リズムギターのアドリアン・リバAdrien Ribat 、ベースを担当するウクライナ人のマキシム・イヴァンチトチェンコMaxime Ivachtchenkoとともに今のバンドを結成したという。すでに彼らが参加したコンサートは国内外ですでに900を超えたとか。
それにしても、なんでこのバンドの活躍がニュースになるのかちょっと不思議。だって、ニュースサイトが紹介するときにMarcoを"Macro"とスペルミスしているくらいだから、マヌーシュ・ジャズ界を変革するような、そこまで重要なバンドというわけでもあるまい。ブルゴーニュ地域圏から、その他の地域でとくに盛んな音楽を志す人材が出てきた、ということが珍しいのだろうか。
このトリオは2016年に2枚目となるアルバム “Voyages”を出しているのだが、まさに、国から国を旅するようにイタリアのカンツォーネやアメリカのポップスを正統派マヌーシュ・ジャズで料理していて、好感が持てる。そして、何よりも、ジミー・ローゼンバーグJimmy Rosenbergの曲をカバーしているところにマヌーシュ・ジャズ愛を感じるのだ。ちなみにAdrien Marcoのオリジナル曲も収録されている。