アルザスをベースに活動するアコーディオン奏者、マルセル・ロフラーMarcel Loefflerのことは、日本でも知っている人が多いと思う。ちょうど、トニー・ガトリフの 映画「僕のスウィング」に出演していたギタリスト、マンディーノ・ラインハルトMandino Reinhardtとともに「Note Manouche」というユニットを結成、日本にも来日するなど、マヌーシュ・ジャズを日本に広く紹介した人でもある。
現在63歳のマルセル・ロフラーは最近、今年2月にアルバム「Anthologie」をリリースした。
このアルバムリリースをきっかけに、France 3による取材に対応し、マヌーシュ・ジャズを継承することの重要性を語っている。
この番組に出演したマルセルによれば、音楽の継承は「口伝」で行われる。最近でこそ動画や録音機材が使われるが、日本の伝統芸能だってかつては口伝だったので、共通項を感じる。マルセルは本映像の中でこんなことを語っている。
「僕が音楽を教わったのは、父で、5歳の時だった。ある年のクリスマスにちょっとした風邪をひいて調子が悪かったのだけれども、楽器を手にしたとたん、ほぼ治ってしまったことがあったね」。
父のライブでギターを担当する息子のCedric Loefflerセドリック・ロフラー、マルセルのアコーディオンの鍵盤から目を離さないお孫さん(Dhajiという名前のようにきこえるが、定かではない)、さらにコンセルヴァトワールで声楽を学びつつ、血縁からZiganeの音を継承する姪っ子のTosca Helmestetterも登場していた。
マヌーシュ・ジャズ界で活躍するヨルギ・ロフラーYorgui Loeffler もマルセルの従兄だったし、弟もミュージシャン。マルセルの背負っているもの、継承すべきものは重いが、血縁が多くいて、みんなが音楽に触れる機会があるのは、明るい未来かもしれない。
なお、このテレビ番組には、やはりマヌーシュ・ジャズ界のビッグスターであり、音楽一家で生まれ育ったギタリスト、ビレリ・ラグレーンBireli Lagreneも登場している。そして、何のジャンルの音楽をやったとしても、たまにマヌーシュ・ジャズというホームに戻るのだ、というような話をしている。いい話なのだが…ビレリのかぶっているキャップが気になった。彼は、NFLの名門チーム、San Francisco 49rsのファンなのか? それとも、ただ貰いもののキャップを無造作にかぶっているだけなのか…。前者だったら、ちょっとびっくり。なぜNFLに出会ったのか、知りたい気がする。
閑話休題。
マルセル渾身のニューアルバムのレコーディング風景がよくわかる映像がたくさんあがっている。ぜひ、聴いてみてください。