もしやこれがアルザス語か? マヌーシュ・ジャズの有名アコーディオン奏者のインタビュー番組

アコーディオン奏者のマルセル・ロフラーMarcel Loefflerは、日本のマヌーシュ・ジャズ好きにはそこそこ知られているのではないか。なぜなら、トニー・ガトリフ(Tony Gatlif)監督による映画、「Swing(僕のスウィング)」が紹介された頃にリリースされた、マヌーシュ・ジャズのアルバム、Note Manoucheのメンバーとして来日していたからだ。「盲目の天才アコーディオン奏者」みたいな肩書きもついていたっけ。

あれからもう15年は経過しただろうか。マルセル、まだ活躍中のようだ。先日、フランスはアルザス地方のテレビ番組Rund Umで紹介されたようで、動画を見つけた。9月に出す予定のアルバムが、マヌーシュ・ジャズとクラシックを融合させたものらしく、その宣伝もかねての取材かもしれない。

何が驚いたって、番組はほぼフランス語の字幕で構成されていること、そして、聴いてもよくわからない言葉を話している。フランス語っぽいけれども違う。もしや…これは、噂の地域言語、アルザス語か?

「なんだそれ」と思った方はこちらをどうぞ。
https://www.bunkyo.ac.jp/faculty/lib/klib/kiyo/edu/e37/e3712.pdf

アルザス地方はドイツとの国境にあることから、歴史上何度も国が変わる運命にあった。その結果、ドイツ語でもフランス語でもない「アルザス語」という言語が独自に発展している。フランスは昨今、このアルザス語を含む言語を「地域言語」として積極的に守っていく姿勢をとっているが、このアルザス語も衰退の一途を辿っているときいていた。なのにこの番組では登場人物の大部分がアルザス語を話しているではないか! 同じライブに出演しているビレリ・ラグレーンBiréli Lagrèneも、アルザス語を話していると思われる。マルセルの息子でギタリストのCedricも登場するが、この息子はフランス語で取材されていた。

マルセルもビレリも、出身は、フランスのアルザス地方バ=ラン県アグノー群Haguenauという場所。ドイツ国境だから、もしはこの地域の人たちにとっては珍しくないのかもしれない。

もちろん、ライブ映像としても貴重なのだが…「アルザス語らしきものを話している」という意味でも貴重な映像だ。