選曲も楽しい、癒しの"Jazz Manouche Confinement" -コロナ体制下で愉しむマヌーシュ・ジャズ

先日、こちらの記事にて、在宅ライブを公開するミュージシャンの話をまとめた。
asquita.hatenablog.jp
この中では、ベネルクス3国で活躍するミュージシャンたちの取り組みをご紹介したのだが、今回、フランスのマヌーシュ・ジャズミュージシャンたちのリモートライブ映像を紹介したい。その名も、"Jazz Manouche Confinement"。Confinementとは、外出禁止のことを指す。Yotam Silbersteinの#quarantineduos ほどではないが、直球勝負のいい名前だ。

フランスでは5月11日に外出禁止令が解除されている(これを、confinementの解除なのでDeconfinementという)。しかし、だからといってすべての活動が許され、日常に戻ったわけではない。6月1日までの期間、活動として許されているのは、図書館、視聴覚室、小規模美術館、そしてお墓まいりくらいのものだ。今後の方針はこれから発表されるものの、ミュージシャンがライブできるようになるのは、もう少し先のことになりそうだ。つまり、ミュージシャンにとってはまだまだConfinementということになる。
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4月末から、"Jazz Manouche Confinement"と題してマヌーシュ・ジャズのレパートリーをリモート公開しているのは、ジャンゴ・ラインハルトの縁戚、Mandino Reinhardtの甥っ子であり、やはりギタリストの父を持つ、フランコ・メルステインFrancko Mehrsteinだ。鉄板のリズム・ギター奏者として、叔父Mandino Reinhardtのクインテットで活躍しただけでなく、兄Dino Mehrsteinのバンドのメンバーとして、また、いとこのチャボロ・シュミットThavolo Schmittや地元ストラスブールで活躍する大物ギタリスト、ビレリ・ラグレーンBireli Lagreneとも共演歴がある。今までそんなに発信している印象がなかったフランコがどうやらこの「外出禁止令」のタイミングでYouTubeチャンネルを立ち上げ、定期的にライブ風景をアップしているのだった。

共演しているメンバーとしては、たしかDjango in NY等のイベントで海外ツアーでも一緒に共演しているコントラバスのジノ・ロマンGino Romanや、こちらも親子で活躍するギタリスト、ブラディ・ウィンテルステインBrady Winterstein、アコーディオンのリュドヴィック・ベイエールLudovic Beier、こちらも有名ギタリストのノエ・ラインハルトNoé Reinhardtなど、マヌーシュ・ジャズが好きだったら間違いなく惹かれるラインナップだ。

5月20日までにアップされている映像は全部で8曲なのだが、素晴らしいのがこの選曲センスだ。普通、マヌーシュ・ジャズのリズムギター奏者だったら、ポンプ炸裂の、いわゆるマヌーシュ・ジャズのスタンダードアレンジばかりをアップしそうなものだが、決してそうなってはいないのだ。ヴァイオリンは当たり前としても、ドラムや歌、トランペット、フェンダーローズと共演している映像もあり、それがマヌーシュ・ジャズらしさといい割合で融合しているのだ。個人的には、「Stella By Starlight」とMichelle Legrandの名曲「Watch what happens」のアレンジに癒された。

それにしてもこの映像、音のずれなどにも配慮しながら組み合わせて編集するのは大変だっただろう。あとどれくらいの曲をアップ予定なのかは知る由はないけれども、日本のこんな片隅にも、この映像をすごく楽しんだ人間がいることを知ってもらいたい。そして、こんな素敵な音楽があることをもっと多くの人に知ってもらいたいな。チャンネルはこちらで登録できます!
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