ユリイカ3月号 辞書の世界

ユリイカ2012年3月号 特集=辞書の世界

ユリイカ2012年3月号 特集=辞書の世界


雑誌だけれどもオモシロかったのでメモしておこうと思う。
わかっていそうでわかっていない辞書編纂のあれこれを特集した号であった。表意文字表音文字、あるいは歴史的かなづかいと現代かなづかいが存在する日本語だからこその編纂の苦労、新語をどうやって判断して辞書に収録していくかなど、興味深いことがたくさん書いてあった。
辞書づくりには、漢和、国語、そして特殊それぞれの辞典においてもひとつの語のとらえ方が微妙に異なってくることはもちろん、学会の意見や漢字施策などもからんでいくるらしい。たとえば、動植物の名前は学会ではカタカナ、漢字施策じゃかな表記など。それでも、エビなどは「海老」という表記をよくみかけたりするから、それも辞書に収録するとか。さらに、「蝦」だと食べ物なのに「ムシ」偏が入って気持ち悪がられるから多用されない、なんて話は面白かった。あとは、小谷野敦さんの新明解批判、前田塁さんによる「たほいや」と名付けられた「辞書ゲーム」の紹介も。
フランス文学者郷原佳以さんの章も興味深かった。ジャック・デリダを読むようになって、その豊かな日常会話の言い回しを学び、フランス語力がアップしたという話、そして、「美しき諍い女」と訳されたLa belle noiseuse の "noiseuse"という単語のもと"noise"がいかに多義的で、訳しにくい言葉であるとか。そもそも英語のnoiseが心地よい音という意味があったことも知らなかった…。