若手マヌーシュ・ジャズグループ"Selmer 607" - 空間Annex
Selmer #607は今も飽きずに聴いている。多田雅範さん&堀内宏公さんが主催する音楽サイトmusicircusの、「musicircus 2010年に聴いた 10枚」でも、Selmer #607のアルバムから、"Anouman"を選出したんだった。
今頃になって、彼らのアルバムの宣伝用動画を発見した。
はじめの30秒は、セルマーギターとSelmer #607についての紹介だ。1932年〜1952年までの間に、1,900本(ギターの単位って「体」? それとも「本」?)が制作されたシリーズであることや、ジャンゴが愛用していたのが#503という型番だったということ。そして、このSelmerシリーズの#607シリーズを弾きこなす、若手トップのギタリストたちの集団、それが"Selmer #607"…云々。
その後は、各メンバーやゲストについて、色々な側面から紹介される。さしずめミニドキュメンタリーだ。
◆Noe Reinhardt
従兄弟にダビングを頼まれた時にストーケロのカセットテープに魅了され、ソロパートをコピーしたりした経験があるとか。キャラバンでの様子なども話している。周囲から笑いをとることが多く、お茶目な性格が浮き彫りになる映像なのだが「セルマー607」がらみの小劇がとくにいい感じ。ノエがこのアルバムでソロを弾いている曲、"Love for Sale"と"Le cimetière des Eléphants"が紹介されている。両方とも、いや、とくにゾウのお墓ソングは、原曲よりも数倍センスがよくなっていることを再認識した。
◆Adrien Moignard
15-6の頃にジャンゴの音楽に出逢ったそうだが、はじめにハマったのはバイオリンの音。で、グラッペリを聴くうちに、横でギターを弾いていたジャンゴに出逢ったらしい。珍しい人だなぁ。
◆Sebastien Giniaux
5才でチェロ、21歳でギターに転向したそう。それで、20代後半にはこのレベル? よほど音楽の基礎が整っていたのだろう。アルバムにモーリス・ラヴェルのレパートリーを入れようと提案したのは、セバスチャンらしい。クラシックを学んだ人らしい選択だと思った。
◆Richard Manetti
ご存知、有名ギタリストでジャンゴから多大なる影響を受けたロマーヌ。その息子は、生まれた時に父親からギターをもらうも弾かず(当然か)、おじい様に教わってはじめてギターを本格的に弾いたとか。そして、集中的に"Au clair de la lune"を習った4時間後におじい様が逝去…。以来ノンストップでギターを弾いているそう。彼の作った"London"という曲、洗練されていてカッコイイ。弟のPierreも登場しているが、この人、取材当時は20歳になっていないのでは? 末恐ろしい兄弟だ。
◆Benoit Convert
リヨン出身、11歳でギターを弾き始める。あるギターの先生から借りた、メタルやらクラシックやらいろいろなジャンルのCDの中に、ジャンゴとビレリがあり、それがきっかけでマヌーシュ・ジャズにハマっていったらしい。このグループのファーストアルバムでは、Adrian Moignardのゲストとして参加したが、あまりにも素晴らしいギタリストなので、セカンドアルバム制作時にメインメンバーで呼ばれたらしい。そしてはじめて認識したのは、この人がLes Doigts de l'Hommeが4人組になったときに加入したギタリストだった、ということ。へえええ、ブノワ・コンヴェールをLDLHと結びつけて考えたことはなかった。
ギタリストばかりフィーチャーしているようにみえるが、ちゃんとうまい具合にバイオリニストやベーシスト、そしてその魅力についても語られている。なんといっても、この映像、そしてこのグループは、間違いなく今は亡きセルマーというギターブランドの価値向上に貢献しているといえる。
このアルバムに参加した大御所も含む、以上5本のまとめ映像がこちら。時間がない人はこれをみるのが一番よいです。