Adrien Moignard(アドリアン・モワニャール)は、フランス生まれのマヌーシュ・ジャズ・ギタリスト…といっていいだろう。 ブルースギターから学び始めて、後からジャンゴ・ラインハルトの世界に魅了されたというので、マヌーシュ・ジャズの世界ではちょっとスタートが遅いのかもしれないが、その才能が認められてDreyfus Jazz からアルバムをリリースしたり、マヌーシュ・ジャズ界の有名ミュージシャンたちとの共演も多数あり、さまざまなマヌーシュ・ジャズのフェスにも出演している。彼の名前を広めた活動のひとつは、もしかしたらSelmar #607というグループかもしれない。
そのAdrien が、今年の夏にアルバムを出したようだ。トリオで活躍するのは、まさにSelmar #607でも一緒だった、Mathieu Chatelain(マチュー・シャトラン)と Jérémie Arranger (ジェレミ・アランジェ)の二人。とくにマチューは、
Ensemble Zaïtiというグループでも一緒だった、盟友だ。自分たちのトリオでも十分魅力的な作品を作りそうなものだが、このアルバムの特徴は、ゲストが豪華なことだろう。Cyrille Aimée (シリル・エイメー), Sanseverino (サンセヴェリーノ), Rocky Gresset (ロッキー・グリセット)…と、期待のメンバーだ。曲目はほぼマヌーシュ・ジャズスタンダードなのだが、こちらのティザーをみて、一気に興味が高まった。そのポイントを3つに絞るとこんな感じか。
ポイント1.ミッシェル・ルグランの名曲 "What Are You Doing the Rest of Your Life"が、ロッキー・グリセットを含むギターバラードで表現されている。ボーカル曲としても名高いこの曲を、ギターで演奏するのか! ゲストに歌手が参加しているのに…。
ポイント2. ジョビンの名曲、"Luiza"を、フランスはトゥールース出身のスペイン語系歌手、Paloma Pradal (パロマ・プラダル)が担当していること。私はこの曲を、ジョビンのボソボソっとした声でしか聴いたことがなかったので、あまりの印象の違いに驚いた。声に張りがあってなんとかっこよく美しいのだ! ちなみにアルバムでは"Django's Bolero"も歌っているようだ。
ポイント3.サンセヴェリーノが歌手として参加…は驚かないけれども、あの"Rythm Futur"に歌詞つけて、ものすごい早口で歌っていること。ただでさえすごいスピードで演奏されるこの曲に歌詞つけて歌うとは、なんという離れ業なのだ。
ティザーのおかげで一気に興味がわいてきたのだった。いい意味の裏切りがたくさんありそうな新作なんだろうな。