セールスマン


2016年、イラン、アスガル・ファルハーディー監督、The Salesman

仲良し夫婦、エマッドとラナは、劇団員としてアーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の上演に向けて稽古に励んでいる。私生活ではある事情で引っ越しを余儀なくされた二人。シーンは引っ越す前の家からはじまるが、この引っ越す前の家も、この映画の結末のキーとなる。

ある日、その引っ越し先で「事件」が起きた。自分にも多少は非があるかもしれない、との思いもあり、また恥ずかしさから事件を表ざたにしたくないラナと、犯人を探し出して制裁を加えたい夫のエマッドの心はすれ違いはじめる。エマの心理状況は演劇にも影響し、エマッドの動揺は普段の仕事である教師の仕事にも影響が出始める。

心理サスペンスと銘打っているだけあって、本当に最後まで目が離せない。そして、妻と夫の心がはなれていくさま、すれ違いがよくわかる。気の強い、多少強引にいろいろなことを決めていくような女性のラナが、事件を境に弱気になっていき、それにだんだんイラっとしてくるエマッドの感情もうまく表現されている。引っ越し先を手配してくれた男性も、ご近所の家族も親切そうな一方で怪しいと思われるところもあったりして、でもムダな話を引っ張ることもないから飽きずにいられる。エマッドが嫌がるラナの気持ちを汲まずに、やたらと復讐にこだわるのにも違和感がある。誰のために、どんな心理がそうさせるのだろうか。最後まで目が離せない。

アスガル・ファルハーディー監督は本当に才能のある監督なんだなぁ。映画「別離」も好印象だった。

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