早熟のアイオワ


2009年(日本公開2014年)、ロリ・ペティ監督、米国、The Poker House

舞台は、70年代のアイオワ州。アグネスの家は、"The Poker House"と呼ばれる、賭博や売春を行う場所になっている。怪しい人々が出入りするその家で、アグネスと二人の妹は自らも売春婦として生計を立てている母親と暮らしている。真ん中の妹ビーは新聞配達で家計を支え、一番下の妹キャミーは外でヒマをつぶす。アグネスはバスケの選手として活躍するだけでなく、地元の新聞でも詩が掲載されるなど活躍をしているが、母親からは自分も売春婦としてはやく稼ぐよう促される始末だ。彼女は売春の元締めの男デュバルに淡い恋心を抱いている。そんなアグネスにある日、事件が起こるのだった…。

そもそもこの、決して明るくない話が監督・脚本を担当したロリ・ペティの実話であることが衝撃だ。神父の父親の暴力もひどいし、母親の堕落ぶりもひどい。子供が育ってはいけない環境と化している。ロリ本人がモデルとなっているアグネスなんて、勉強ができるのにお酒かクスリに飲まれた母親に邪魔をされているし、二人の妹たちもこんな環境でよくこんなに素直に育ったね、と感心するレベルだ。

アグネスを演じるのはジェニファー・ローレンス。「ウィンターズ・ボーン」の名演技でおなじみですね。
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この映画は、ジェニファーがブレイク前の演技とのことだが、末恐ろしい女優魂をみせている。そんななか、たまにかかる音楽と子役の妹たちの愛らしさが、悲惨な状況を多少は和らげてくれる。エンディング、3姉妹がMarvin Gayeの歌声に合わせて "Ain't No Mountain High Enough" を歌うところでちょっと救われる気持ちになった。もっとも、このシーンでの彼らは"If you need me, call me No matter where you are No matter how far..."って歌っているのに、実際は当座助けてくれる人が見当たらないのだがね。そんな矛盾も相俟って歌詞が心にしみる。

まさにCarpool Karaoke!!