2020年8月15日・16日の2日にわたり、フランスはノルマンディのCresseveuilleクレセヴイユという場所で、La Gitaneというジャズフェスが行われた。La Gitaneは主催団体の名前で、"Jazz-guitare au pré"というのが正式なイベントの名前だと見えなくもないが、Festival Jazz manouche La Gitaneといってる新聞記事もあるので、La Gitaneと呼ぼう。開催は、町内の特設テントの中のステージだ。
Antoine Boyerアントワーヌ・ボワイエール。私は、アントワーヌが父親のギタリスト、セバスチャンSebastien Boyerと結成していた「エスメラルド ジャズEsmerald' Jazz」で知ったが、今やすっかり親から独立し、マヌーシュ・ジャズの枠を超えた独自の活躍をしている印象だ。
オフィシャルサイトの経歴によれば、独学でマヌーシュ・ジャズを習得している。お父様とのデュオでレコーディングしたファーストアルバムでは、Francis Alfred Moermanとも共演していた。アルバムの2枚目くらいからその実力を評価されるようになり、今やメジャーなマヌーシュ・ジャズ/ジプシー・ジャズフェスのメインアクトだ。誰もが知るマヌーシュ・ジャズギタリストと舞台を共にする機会も多くなったと思う。
ヴァイオリンのフィオナ・モンベFiona Monbetと活動はしているようだが、もうマヌーシュ・ジャズの枠のこだわりはないのかな…と思っていたが、ここ半年で、尊敬するミュージシャンたちに対するワルツ曲を次々と発表している。タイトルは"Waltz for XXX"。ということで、現在3作品が公開されている。
はじめにワルツで登場したのは、"Waltz for Angelo"。アンジェロといえば、おわかりだろう。アントワーヌがギターを始める前からインスピレーションを与えられたという、アンジェロ・ドゥバールAngelo Debarreを意識して作曲されたものらしい。曲の雰囲気で、ああなるほど、という感じ。きっとアンジェロのプレイスタイルをふんだんに取り込んでいるのだろう。
で、次に公開されたのは、"Waltz for Bill"。ビルはジャズ業界に多くいる名前かと思うが、このBillはBill Evansだという。"Waltz for XXX”とくればまずはDebby、Waltz for Debbyという名曲がある。だからトリビュートしたくなったのかしら。ちゃんとBill Evansを彷彿とさせる、優しくメロディアスなワルツになっている。
アントワーヌによるWaltz for Debbyはこちら。すごくいい気分になれる演奏です。
そして3曲目。"Waltz for Bireli"…ビレリといえば ビレリ・ラグレーンBiréli Lagrèneしかいないだろう。ビレリもアントワーヌに大きく影響を与えたギタリストなのだという。
この曲には、ビレリのプレイテクニックや旋律をおおいに取り入れているという。難しそうだな。