僕は君のために蝶になる


蝴蝶飛Linger/2008年/ジョニー・トー監督、香港
リー・ビンビンが演じる主人公エンジャは、学内の人気者であるアトン(ヴィック・チョウ)とひょんなきっかけから付き合い始めるも、不測の事態により彼を失う。そして、それから数年後。彼を失ったことで、精神の安定を必死で保ちつつ法律事務所で働く彼女の前に、アトムの幻覚が現れるようになる。また、同じ時期に、弁護しなければならない問題児シューが現れる。シューはエンジャに心を許すようになるも、そんな矢先に事件が起こる…。
アトンの死に方、そして「浮かばれない霊が突然出てくる状況」とくれば、もっとホラーな作品かと思った。アトンがなくなる前の二人の会話もひどいものだったし…。ところが、2人の過去を読み解いていくと、彼らの関係性が甘かった頃というのがあり、当時の2人の心持ちというのがわかる。好きだからこそ、素直になれない感じ。でもみてしまう、みたいなところがよくわかる。トー監督の恋愛作品にさして期待はしていなかったが、屈折した態度の2人をみるにつけて、本来の恋愛ってこんな感じだったよなぁと思った。エンディングソングの歌詞がその感じを端的に表しているのではないか。人は失った時に好きだったことに気が付くのだよ、ということだな。良い作品だったと思った。
主役のリー・ビンビン、奪命金に出ていたデニス・ホーと見間違えたのは私だけか?
それはともかく、普段からトー作品に出ているマギー・シューやラム・シュー、そしてロイ・チョンが出演しており、ちょっと安心する。とくにラム・シューとロイ・チョンは、この映画では堅気の役というところでついつい笑ってしまった。