hana-1970、コザが燃えた日-@東京芸術劇場プレイハウス

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巷の評判をきいて表題の作品を観にいった。
時は1970年12月20日、当時のコザでおこった"騒動"の夜に、外の騒ぎを感じながらhanaというAサインバーで繰り広げられる会話を通じて、hanaの店主である「おかあ」とその家族の状況が洗い出され、同時に当時の沖縄の状況を描いていく、という作品だ。
実はコザの当時の事件のことも、詳細を知らなかったのだが...色々読むと当時の沖縄は日本への返還を2年後に控えており、どちらの国にも守られることなく、米軍がやりたい放題やっているかなりひどい状況にあったようだ。そうした理不尽のなかで民衆の怒りが爆発したのがこのコザ騒動なのだろう。
ryukyushimpo.jp

登場人物はみんな「うちなーぐち」と呼ばれる沖縄の言葉で話すので、沖縄の言語や文化に興味があってトートーメーくらいきいたことがある私でもなかなかついていくのは簡単ではなかった。こうした無知なないちゃーを代表して、舞台には「本土から来た、沢田教一に憧れているルポライター」という役回りの人が配されている。この彼がいちいち質問することで、出演者のうちなーぐちやわかりにく当時の事情を標準語でうまく説明してくれるような仕掛けになっている。これにより、当時の時代背景や沖縄文化を全く知らない人でも、ストーリーについていけるようにしているのだろう。ちなみに私は「タックルせい」というキーワード的な言葉がきちんと理解できず、あとで友達にきいたわかった...という情けなさなのだが。

【追記】その後、「人々の怒りをそんな言葉で表現するか?」と疑問がわき確認してみたところ「叩き殺せ」を意味する「たっくるせ」と言っていたことがわかった...これなら納得がいく....

このルポライターが「戦争を知らない子供たち」という曲が流行っている旨を紹介すると、おかあが「内地の人は戦争が終わったと思っているのか。そんなうちなんちゅはひとりもおらん」というような問いかけをするのが印象的であった。沖縄県出身の友人曰く、「この演劇、すごくよかったけれども、うちのかーちゃんとかは観たがらないと思うし、沖縄での上演は難しいと思う。この演劇で話されていたことはまだ過去でないから」とのこと。苦しいことがあってもいつもわらっているおかあ、というのも、沖縄の家はどこでもそうだ、と彼女はいっていた。

法律が整備された今でも、相変わらず米兵による理不尽な事件は報道されている。たぶん、50年以上経ってもまだその傷は癒えていない。この演劇を通じて、沖縄についてもう少し深い考えを巡らせるきっかけになればいいなと思った。
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