1974年に銀座につくられたレコーディングスタジオ、「音響ハウス」を愛する人たちのドキュメンタリー。映画に登場する、超有名ミュージシャンたちが、音響ハウスがいかに素晴らしいスタジオで、音に魔法がかかるのか、自分たちの言葉で説明していく。また、ギタリスト佐橋佳幸氏と、レコーディングエンジニアの飯尾芳史の企画により、音響ハウスで新曲をレコーディングするというプロジェクトも同時進行。
私はいわゆるシティポップは大好きだが、世代的には、この映画に登場するミュージシャンをオンタイムで聴いていたとは言い難い。音響ハウスのことだって、知ったのはこの映画がきっかけだ。それでも、この映画の予告編動画を観たときに、HANAちゃんの声とこの新曲のメロディラインに圧倒されて、曲のCD欲しさに映画をみる前にパンフレットを購入していた。そして、さんざんCDを聴き倒してからこの映画を観賞したのだった。
遠藤氏はじめとした裏方の丁寧な機材メンテナンスの姿勢は称賛に値するが、まあとにかく出演者が豪華だ。坂本龍一に矢野顕子、松任谷由実&正隆夫妻、佐野元春、綾戸智恵...彼らの中には、レコーディング中に音響ハウスにほぼ住んでいた状態の人や子守をしながらレコーディングに勤しむ人、自宅スタジオじゃうまくいかなかったレコーディングが音響ハウスで一発OKのテイクでうまくいった...などのいい話がたくさん出てくる。当時はCMソングもゼロから作り込んでミュージシャンに参加させるなど、音楽にとって贅沢な時代だったということもわかる。
結局、音響ハウスで良いレコーデイングができる秘密は、ミュージシャンが気持ちよくストレスなく演奏できる環境と雰囲気...という曖昧な言葉でしか理解できなかったのだが、HANAのレコーディングと、それに取り組むミュージシャンたちの姿勢にも感動した。素晴らしい声だけれどもまだ完璧とはいえない、名も無い新人ミュージシャンのために豪華すぎる演奏メンバーが真剣に向き合い、豊かすぎる伴奏を繰り広げる。もう理屈ではなく、Melody-Go-Roundという曲と参加者の情熱に圧倒されて、鳥肌が立ち、自然と泣けてきてしまった。大貫妙子のコーラスをちゃんと確認しきたくて、映画を見終わってもなお、映画パンフレットのおまけCDを聴きまくっている。フルアルバムがでたら真っ先に買う。間違いなく買う。