秀山祭九月大歌舞伎〜二世中村吉右衛門一周忌追善〜 第二部@歌舞伎座


昨年11月に逝去した二世中村吉右衛門の一周忌追善興行として行われた「秀山祭九月第歌舞伎」に行った。二世吉右衛門が初代の俳名を冠した「秀山祭」をはじめたのが2006年9月だったそう。恥ずかしながら知らなかったのだが、今回の講演で、今の松本白鸚吉右衛門が実の兄弟であったことを知った。だって屋号も違うし、歌舞伎の世界ではよく「紀尾井町の兄さん」とかいう呼び方をしあうから、本当に血のつながった兄弟だったとは知らなかった。吉右衛門さん、初代松本白鸚(九代目幸四郎)の次男に生まれたそうだが、母方の祖父・初代吉右衛門に跡取りとなる男児がいなかったため、その養子となって吉右衛門の名前を継いだらしいのだ。一時は実兄とともに東宝にうつって現代劇なんかも積極的にやっていたが、その後松竹に戻って歌舞伎を追求したとか。

今回私が行ったのは、第二部。はじめの演目である「松浦の太鼓」は、初代吉右衛門が制定した、得意芸を集めた家の芸「秀山十種」のうちのひとつらしく、その多くが加藤清正に因む演目らしい。ただし、十種といいながら実際には六種類しかないそうだが。赤穂浪士の討ち入りがテーマで主役の大名、松浦鎮信松本白鸚が演じるというものだったが、陣太鼓でちょっと興奮する松浦侯がちょっと可愛らしかった。途中で、松本白鸚中村歌六中村梅玉の口上がさしはらまれていた。

2番目の「揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)」は、いわば吉右衛門の当たり役の名場面をつなげたもの。熊谷陣屋以外は見たことがないしよくわからなかったけれど、はじめの「籠釣瓶花街酔醒」は吉原の風景で、そこに兵庫屋八ツ橋という花魁が出てくる...その行列を見せる場面転換が鮮やかで、それだけでテンションがあがるものだった。
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歌舞伎に明るくない人からも「鬼平犯科帳」などによりよく知られていた吉右衛門。つくづく惜しい人を亡くした。松本白鸚吉右衛門、同じ兄弟でも雰囲気も芸風もまったく異なる二人だからなぁ。弟を先に亡くした兄の気持ちを思うと切ない。名優がどんどん亡くなっていくのも気になるが、残された役者さんたちは働きすぎぬようにしていただきたいところ...。長くわたしたちを楽しませてほしい!
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