この世界の片隅に


2016年、片渕須直監督、日本

世の中「令和」の移り変わりにわいている。年越しそばよろしくお蕎麦を食べたり、居酒屋さんで盛り上がったりといろいろな過ごし方をする人たちがいたみたいだが、私は雑事をこなしながら映画を観ていた。そのうちの1本が、この映画。新しい時代を迎えるとともにもう一度観たいと思ったのだった。

舞台は昭和19年。主人公のすずは、海軍に勤務する夫、周作の暮らす呉に広島から嫁ぐことになる。戦時中とはいえ、すずの日常は普通そのものだ。絵が得意なすずがスケッチ対象にしたものが機密事項にあたるということでスパイ行為を疑われて連行されそうになったり、節約のために食べられる草を集めて料理したり、友達の恋をからかったり、結婚前に好きだった人が出兵する前にちょっと会ったり…でも、そんなすずが、あることをきっかけに生きる希望を見失いそうになる。そんな頃に原爆が投下され、戦争は終了する。すずは、いろいろな不条理を払いのけてたくましく生きていく様子が描かれている。

改めてみても、心にしみるシーンや言葉がたくさんある。水原哲の言葉「ワシを思い出すなら、わろうてくれ。この世界で普通でまともでおってくれ」とかね。どんなにつらいことがあっても、人は何かをよりどころにして生きていくんだ。そんななかで笑顔やユーモアを忘れることなく生きていきたいね。