フェアウェル〜愛と哀しみのスパイ


2009年、フランス、クリスチャン・カリオン監督。

この間、米国でロシアのスパイが逮捕されて、「まだやっているんだ」と衝撃を受けたのだが、まさに東西冷戦時のただなか、スパイによって西側の情報を得ていたソ連が崩壊するきっかけになったという、「フェアウェル事件」を扱った映画。「パパは出張中!」「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」とクストリッツア映画を観てきたが、今回は監督としてではなく、俳優として主役、グリゴリエフ大佐を演じている。そういえば、クストリッツアの外見なんて気にしたこともなかったが、この映画では適役だと思う。

寡黙で不器用、かつKGBの大佐という立場でありながら、祖国を愛するあまりに自らが得た極秘情報を西側に流すことを決意した男の話だ。自らのフランス語力を活かして、フランス家電メーカーの技師経由で情報を流すのだが、この男と切迫した状況のなかに生まれるささやかな友情が描かれる。クストリッツアの寡黙な感じやいかにも片言のフランス語が絶妙だ。最後の最後まで、静かだけれど、飽きさせない展開をみせる映画だと思った。